行き先表示があの名曲の歌詞に?! ライブ時の鹿児島市営バスの演出が心憎すぎる
「愛のままに」を出発、「わがままに」「僕は君だけを」の停留所を経由して「傷つけない」行き、って…!!! どこかで聞いたことがあるようなフレーズだけど、本当にこんなバス路線あるの?
実はこれ、コラージュや展示ではなく、鹿児島市営バスが運行する本物のバス。B'zのライブが鹿児島アリーナで開かれた今月8、9日限定で、停留所の表示部分が代表曲「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」の歌詞の一部に変わっていたのだ。ライブ前の浮足立つファンの気持ちをさらにアゲるのに一役買ったその表示の写真がSNS上に投稿されるや否や、「最高すぎません?」「B'zファンにはたまらないw」「粋だねぇ」と話題になった。でもこんなことって許されるの? 発案者で鹿児島市交通局バス事業課の岩下伸司さんに聞きました。
-この演出はいつから?
「2013年にミスターチルドレンさんのライブが鹿児島アリーナで開催されるときに、バス前方の行き先表示をアレンジしたのが最初です。市営バスは鹿児島中央駅から鹿児島アリーナまで臨時のシャトルバスを出したんですが、そのときに『反応悪ければ止めればいいか』と軽い気持ちで…」
-えっ。軽い気持ち? 許可とかいらなかったんですか?
「いえ、僕の独断です」
-えっ。そんな偉い方だったんですか。
「いえ、一介の一般職員です」
-えっ。じゃあ、事前に根回しとか?
「いえ、相談も含め一切していません。当日、奇襲作戦でした。それがまあ、幸い吉と出たというか…。組織のルールや手続き上、適切かと言われれば難しいですが…」
-なんと勇気のある…。怒られなかったのですか?
「まあ、ザワザワはしましたが、理解ある上司だったので笑 でも、鹿児島は地続きで行ける最南端の地。有名アーティストのライブとなれば、関西や関東、北海道からもお客様が来られています。そういう方々に、ライブ前からいい気分になってもらうお手伝いを、何とかできれば…という思いだったんです」
-でも、そんな表示板の表示って簡単に変えられるものなんですか?
「当市交通局では自前の編集ソフトを使っているので、パソコン上で作業するだけなんです。ですから、思い付いて形にするのにさほど時間はかからないんです。こういう環境だからこそ、奇襲もできたわけですが(笑)」
さらに、同年のHey!Say!JUMPのライブでは、前方だけでなくサイドの停留所表示も、「YOU→このバス→アリーナ→行くよ!」とアレンジ。これまでに長渕剛や松田聖子、などのライブでも行い、大好評に。その後、岩下さんの後を継いだ千代森政一さんが、歌詞バージョンを導入。このときも、上司へのお伺いは一切立てなかったそうです。
「相談するとつまらないものになってしまいますし、つまらなければやる意味がない。公共交通という堅い仕事ですが、その点ではゆるいというか、職員のオリジナリティを尊重してくれる風土には感謝しています」と岩下さん。
とはいえ本業は路線バス。小粋なサプライズは、鹿児島アリーナのライブ限定で、本来の業務の邪魔にならないよう、臨時便の表示板ファイルは常に上書きしており、同じアーティストでも毎回歌詞の表示を一から考えているそうです。
にしても、移動の疲れも吹き飛ぶような演出をしてくれ、さらに、こんなチャレンジを許してくれるおおらかな組織。ああ、鹿児島、好きになってしまっていいですか?!(まいどなニュース・広畑千春)