育児放棄した母猫とお腹をすかせた子猫たち 保護されて幸せに
民家でエサをもらっていた野良猫が子猫を産んだ。しかし、母猫は授乳ができず、子猫は衰弱してしまった。個人で猫の保護や譲渡をしている植松さんは、不妊手術をしないでエサだけ与えるのは、野良猫が増える原因になると言う。
静岡県で猫の保護活動をしている植松さんに、野良猫に家の外でエサをあげていた人から相談があったのは2015年10月のことだった。
エサをあげていたが、不妊手術をしていなかったので猫が妊娠してしまった。その後、野良猫は2匹の子猫を無事出産したのだが、まだ授乳が必要な時期に育児放棄してしまった。子猫が日に日に弱ってきたため、困っているということだった。
植松さんは、まずは母子ともに連れてきてもらうことにした。エサをあげていた人になれていたので、捕獲器を使わなくても抱っこして簡単にキャリーケースに入れることができた。
植松さんが母猫を動物病院に連れて行くと、恐らく何らかのストレスで母乳が出ないのだという。おっぱいも張っていなくて母乳が出ないから、子猫を育てるのが嫌になったようだった。
子猫はまだ乳飲み子だったので、昼となく夜となく2~3時間おきにミルクを飲ませなければならない。しかし、植松さんは仕事をしていたので、さすがに24時間体制でミルクを飲ませることはできなかった。子猫たちは知り合いのボランティアに託し、母猫を引き取った。エサを与えていた人は、最初から植松さんに引き取ってほしいと言っていたので、そこに返してもらちがあかないと思ったそうだ。エサをあげているだけなら楽しいが、いなくなったらいなくなったで仕方ないという感じがにじんでいた。母猫は、秋に植松家の一員となり、「もみじ」と名付けられ、不妊手術も受けた。
「子猫たちは人に育てられると、母猫のことは忘れて、人間を母親と思って育つんです。生後3週間くらいだった2匹の子猫たちも人の手によって育てられたので、人が大好きな猫になりました」
もみじちゃんは、母乳が出なくて育てられなかったから子猫に興味がなかったのか、単に子猫が嫌いだったのかは分からないが、植松さんのところに後に子猫が来ても無関心だった。
「普通、出産経験のある猫は、子猫の鳴き声がすると興味を示すんです。でも、もみじはまったくのマイペースで、無関心でした。普通は子猫がいなくなると探すんですが、子猫たちがミルクボランティアさんのところに行っても、探す素振りもありませんでした」
子猫には興味を示さないもみじちゃんだが、ごはんやおやつは大好きだ。自分から人に寄っていってスリスリすることはないが、なでても怒ることはなく、首を触られると喜ぶという。
植松さんは、不妊手術をしないと子猫ができるということを理解していないまま、野良猫にエサだけ与える人がいると言う。
「エサをあげていた猫が妊娠して、子猫を産んでから慌てて相談にみえるんです。不妊手術をしないと子猫ができるということをきちんと理解してほしい。うちに来てエサを食べて元気に育っているからいいというものではないんです」
エサだけ与えて、他のことは知らん顔という人がいると、いつまでたっても母猫が妊娠して、子猫が産まれるという流れを変えられない。猫のことを本当に可愛いと思うなら、不妊手術をして、地域猫を見守る必要がある。
(まいどなニュース特約・渡辺陽)