「う〇ちいっぱい」!?…衝撃の看板文字、実は滋養たっぷり「薬膳お好み焼き屋」だった
「栄養いっぱい 繊維いっぱい うんちいっぱい 口福いっぱい 薬膳料理 一隅」…待って。「うんちいっぱい(二度目)」!?…何かの間違いでは、と目を疑いたくなる看板のお好み焼き屋が、神戸にあります。ネットでのレヴューを見るとなかなかの高評価。しかも看板通り、「薬膳」無添加のお好み焼きらしいのです。ぜひ食べてみたい!ということで取材に伺いました。
各線三宮駅から5分ほど北上したところに、その店はありました。ひっそりとした隠れ家風の佇まい、そして、くだんの看板…。思い切って扉を開けて中に入ると、「おかえりなさい~」と優しい声が出迎えてくれました。
店内は女性ばかりのスタッフが4人。皆、表情も明るく、にこやかに、口ぐちにおかえりなさい、と筆者に声がけしてくれます。シャイな筆者が「あ、あ、どどうも」と、へどもどしていると、「このお店はお客様がそれぞれのお家に帰ってきたように寛いでほしいんですよ。だから『おかえりなさい』とお声がけしています」と、お店のオーナーの中村淳子さん。確かに店内は清潔感にあふれたシックな趣きながらも、初見の客にもなじみやすい親しみが感じられます。奥には大きなL字型の鉄板があり、ぴかぴかに輝いています。
中村さんは御年86歳。料理に携わってはや50年を越えるといます。NPO日本食育インストラクター協会認定の食育インストラクターであり、神戸市認証NPO法人暮らしの寺子屋ライフサイエンス理事長でもあります。そのほか、とてもここでは書ききれないほどのキャリアの持ち主ですが、ご自身は「ただ人に美味しいものを食べて欲しいだけの、薬膳料理家です」とにっこり。そんな中村さんの考える薬膳とは…。
「世間では『薬膳』というと薬草を使った特別な料理と思うようです。でも、そんなことありません。スーパーでも手に入る、野菜や肉を使ってもいい。それぞれの食材が最高の相性となるよう組み合わせることで、最高の『うんち』を作る『薬膳』になるんです」
出ました、うんち…!!なぜ『うんち』が大事なのでしょうか。
「まず食べ物には体内で肉や骨になる『作り手』であるたんぱく質があります。これを体内の必要箇所に送る『運び屋』ミネラルが必要になり、こちらは野菜です。どちらもバランス良くとることが大事。偏ってはいけません」
「でも悲しいかな、昨今の食べ物には多かれ少なかれ『添加物』が入っています。それをしっかり出すことが肝心です。排出が必要な『うんち』は2種類あり、1つは、にら、ひじきなどが含まれる不水溶性の排泄物である『沈むうんち』。こちらは添加物などの有毒物質が体外に排出されます。もう1つの『浮くうんち』である水溶性の排泄物は、キャベツなどの繊維質が老廃物とともに出てきます。この2つのうんちをしっかり出し切ることが大事です」
「今から召し上がっていただく「隠密焼きそば」(1300円)には『出す力』をうながす糸こんにゃくがたっぷり入っています。きっと、明日朝のお通じはどっさりですよ」
あ、ありがとうございます…筆者の健康への配慮に感謝しつつ、焼きそばをいただきます。味がしっかりしみ込んだ糸こんにゃくが美味しい…!!ソースの優しい甘みがたまりません。
「ソースは自家製です。調味料はいっさい使っていません。りんご、トマト、人参、玉ねぎ、ごぼう、プルーン等々を毎日擦りおろして1~2時間、煮込んで作っています。またこれに限らず、当店で使用する肉や野菜や油などの具材はすべて国産。塩も長崎県の五島列島で、ご夫婦が手づくりしたものを使用しています」
小食の筆者ですが、つるつる喉をすべるそばと糸こんにゃくの勢いであっという間に完食しました。
「胃に入った食べ物は弱アルカリ性であることがベストなんです。これは胃腸と次の器官である十二指腸をつなぐ『幽門』が、アルカリ性の状態でないと食物を通さない性質を持っていることに関係しています。酸性の食べ物はすぐには消化できないので、胃もたれなどの症状が起きたりすることも。でも当店で出す食品はほとんど全て、口に入れる段階で弱アルカリ性。だから食べやすいんですよ」
このあと、ひじきたっぷりの「がんぐろ焼き」(1120円)と、豚肉がかりっと焼き上げられた「豚玉シンプル焼き」(920円)をそれぞれ少しずついただきました。たっぷりのキャベツにふわふわの生地が、それぞれの具材の味と合わさって口内で溶けていきます。
「当店では消化に悪いとされるグルテンを含む小麦粉ではなく、米粉を生地に使用しています。少しお酢を垂らすとふんわりするんですよ」
ちなみに、常連さんたちは会計をすませた後「行ってきます~!」と高らかに手を振って店を出ていくそう。また、健康に留意する人がリピーターとして訪れるとのことで、医者などの医療関係者の来店も多い、というのもうなずけます。筆者も「うんちいっぱい出してね!」という励ましとともに、中村さんを始めとするスタッフの皆さんに「行ってらっしゃい~」と見送られ、ほっこり、あたたかい気持ちで店を後にしました。
…え?それで翌朝はどうだったかって?それは“看板に偽りなし”な結果であった…とだけ最後に申し添えておきます。(まいどなニュース特約・山本明)
◇薬膳料理創作お好み焼一隅 TEL:078・241・8511(月曜休)
※本文中に出てくる価格はすべて税抜