想像してみて…一生ビスケットみたいな栄養食を食べる人生 犬猫に手作りごはんのすすめ

一緒に手作りのごはんを楽しみながら、人間も動物も一緒に健康になれることを目指しましょう
同じ材料を使った人間向けと犬猫向けのメニューの例。人間向けのごはんをつくるついでに作ることができる(写真左が犬猫用。右が人間用)
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 子犬や子猫を動物病院へ連れていらした患者さんには、獣医師は飼い方や食事、予防などについて一通りの説明をします。そのとき私が、「まだ幼いので腸内細菌のバランスが一人前ではありません。しっかり『腸活』してくださいね。ヨーグルトも良いですが、お野菜もいろいろ…お肉も…」と話し出すと、「ええ~!人間の食べるものを与えても良いのですか?」と飼い主さんに驚かれることがあります。

 おなかの腸の中に、多彩な細菌を住まわせ、育てていく『腸活』。動物にとって腸内の細菌は、食べ物の消化を助けるだけでなく、私たちに必要なビタミンを作ってくれたり免疫を高めるなどの良いことをしてくれますが、それは多様な種類の細菌がたくさんいることで実現します。そのためには、食べ物もいろいろな種類のものを取ることが大切です。犬や猫も、人間と同じ食材を食べても問題はなく(一部ネギなどの例外もありますが)、人間のごはんの残り物など、様々なものを食べていたころも一昔前にはありました。しかし、今の時代、一般的にはそう思われていないようですね。

 私は、某大手のペットフードメーカーのサイトで「人間が食べているものをいろいろ与えると、アレルギーになって身体がかゆくなる。我が社のフードだけを与えていれば安心!」といった趣旨のマンガを見つけて、驚いたことがあります。アレルギーについては逆の考え方もあるのです。加工食品を多く食べると過剰に化学物質も摂取することになるため、腸内細菌のバランスが崩れるほか、化学物質の分解・解毒に余計な栄養を使ってしまいます。そのため、外敵の侵入から身体を守る腸粘膜や皮膚が弱くなり、アレルギー(のような症状)が出るともいわれているのです。

 市販のドライフードというのは、人間の食べ物に置き換えると、ビスケットタイプのバランス栄養食(例えば、『カロリーメイト』みたいな感じですかね?)みたいなものです。かわいいパートナーが日々ドライフードを食べ続けているのであれば、ぜひ自分のことに置き換えて想像してみてください。あなたはずっとビスケットタイプのバランス栄養食を食べて過ごすことはできますか?はたして満足できるでしょうか?…それはなんとも味気ない毎日ではないでしょうか?

 栄養学的にみると、食べ物は調理・加工すればするほど、栄養素は破壊・分解されてしまい、抜け落ちていくのが普通です。実際、ドライフードは原材料が全く憶測できない形態まで、高度に調理・加工されていますが、その工程でビタミンがほとんど失われてしまっています。そのため、あらためて合成ビタミンを添加しないとAAFCO(米国飼料検査官協会)の基準をクリアすることさえできなくなっています。

 それならば、ご家庭でペットフードに使われているのと同じような材料を用意して、最小限の調理で与えたほうが、栄養学的にとても優れたごはんになりますね。調理される前の食べ物の中には、まだまだ科学的に解明されていない非常に多くの栄養素が含まれています。もちろん、素材本来の味を生かした簡単な調理のほうが、味も香りも歯ざわりも!抜群です。

 とはいうものの、何を作って与えたら良いのでしょうか…? これがわからないために、手作りごはんの世界に踏み込めないという方もおられるでしょう。また、「動物用のレシピ」なんて書いてあると、とてもとても大変な気がして、ハードルが高いような印象を受ける方もおられるでしょう。

 でも、ご安心ください。動物用のごはんを手作りすることは、そんなに難しいことではありません。自分の食事を作るときに、人間と同じ食材を使って、少しの工夫だけで手軽に始めることができます。人間だって、加工された食べ物よりも、手作りのごはんのほうが、もちろん栄養学的にはメリットが大きいわけで…であれば、人間と動物、一緒に手作りのごはんを食べて、ともに健康になれることを目指したいですね。

 最初から全てを手作りにするのは、飼い主さんも動物も慣れないと大変です。これまでドライフードしか食べていなかった動物が、いきなり異なる食事を与えられると、食べないこともありますし、食べても胃腸が対応できずに吐いたり下痢してしまうこともあります。まずは、ドライフードに手作りの「ささ身チップス」などをトッピングするだけでも構いません。少しずつ変化させていきましょう。ぜひトライしてみてください!

 最終的に、どのようなごはんを作れば良いのかについては、人間と犬猫は「種」が違うことを考えるとわかりやすいと思います。人間は雑食ですが、猫は完全な肉食で、犬は肉食よりの雑食です。よって、人間とは口の形や消化器の具合も異なっています。ですから、同じ食材を食べるといっても、肉の分量割合が変わってきます。人間よりも、かなり多くなります。例えば、「丼もの」を食べるときのお米と肉の割合が、猫の場合は人間とは真逆になるイメージです。犬はその中間です。味付けは、基本的に犬猫には不要です。また、肉食の動物は野菜の栄養を吸収する能力が低いため、吸収しやすいように細かくカットして与えます。

 ではキッチンで具体的にどうしたら良いのか? 具体的なレシピは近日ご紹介いたします。(獣医師・小宮みぎわ)

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