野良猫の家族を保護 逃げた子猫も1年後に妊娠して戻ってきた
ある住宅地で生まれた子猫たち、5匹の子猫のうち2匹は近所の人が引き受け、2匹は埼玉県に住む佐藤さんが保護した。残る1匹はお母さん猫と逃げてしまい、行方が分からなくなったが、1年後、妊娠して戻ってきた。
■エサを与えていた野良猫が妊娠、子猫を出産
佐藤さんの妹さんは、庭に来る野良猫にエサを与えていた。近所にも数人エサやりをしている人がいて猫を見守っていた。2014年8月、佐藤さんのもとに妹さんから、慌てた様子で1本の電話が入る。1匹の野良猫が5匹の子猫を産んで近所の家の軒下で暮らしているが、同じ住宅地の人が怒って「エサなんかあげるから」「保健所を呼ぶ」と言っているということだった。鉢植えを猫に倒されるというのが、猫を嫌がる理由のようだった。
佐藤さんは現場にかけつけ、近所の人と一緒に虫取り用の網とキャリーバッグで猫の親子の捕獲を試みた。普段、人からエサをもらっていたので人に慣れている様子だったが、それでも「捕まえるオーラ」を出すと警戒して逃げてしまう。母猫と1匹の子猫は行方が分からなくなった。近所の人が2匹のキジトラの子猫を飼うことになり、佐藤さんは、初日に捕獲したキジトラの子猫と後日捕獲した黒猫の子猫を引き受けた。
2匹の子猫はお盆の時に佐藤さん宅に来た。佐藤さんはスイレンが好きなので、キジトラをスイレン、黒猫をハクレンと名付けたかったが、家族に不評だったので、スイ坊とハク坊という名前にした。スイ坊とハク坊は、優しい子に育った。
■逃げた子猫が妊娠して戻ってきた
それ以来、妹や近所のエサやりさんは野良猫にエサを与えるのをやめた。不妊手術をしないと子猫が産まれるし、エサやりは暗黙の了解のもとで続けてきたが、なかには猫が嫌いな人もいるので、トラブルを避けるためだった。
ところが、1年後の2015年7月、母猫と子猫だった猫が戻ってきた。しかも、今度は子猫だった猫が妊娠していたのだ。
「妹は、『お腹が大きな猫がいる。これはきっと去年逃げた子だ。お腹の大きな猫を見捨てられない』と、エサをあげていました。母猫は、エサをもらえる場所を譲って、どこかに消えてしまったそうです」
しばらくすると、その猫が子猫を出産した。9月くらいに、猫嫌いの人が「保健所を呼ぶ」と再び騒ぎ出したので、佐藤さんと妹さんは、「すみません、いま捕まえます」と言って難を逃れた。佐藤さんは、キャリーバッグにおいしいエサをおいて、猫たちを捕獲した。
■違う運命をたどってしまった兄弟猫と妹猫
母猫のモクちゃんは、3匹の子猫を産んでいた。佐藤さんは、最初はモクちゃんと子猫たちを譲渡会に出した。子猫はすぐに里親が決まったが、モクちゃんだけ大きいから残ってしまった。一向に里親が決まらず、モクちゃん以外の大人の猫もずっと残ったままだった。半年後、佐藤さんは、モクちゃんを譲渡するのをあきらめ、自分で飼うことにしたという。
スイ坊とハク坊は、兄弟一緒に保護されたので、とても仲が良く、いつも一緒に歩いている。しかし、母猫と逃げて1年間どこかで暮らしていたモクは、本当の兄弟だが2匹の間には入らない。
「モクは、とても大人しくて優しい子なんです。母性本能が強くて、他の猫が産んだ子にも母乳を与えていました。その子猫たちもうちで飼っているのですが、いまだにモクのお乳を吸おうとします。モクは、吸いつかれても何も言わずに受け入れているんです」
(まいどなニュース特約・渡辺陽)