“壁ドン”が婚活イベント初導入 対象40~50代の理由とは…50歳女性の切実な告白
「壁ドン」が新語・流行語大賞のトップテン入りしたのは2014年のこと。漫画「L〓DK」に登場するシーンとしてSNSで拡散され、同年の映画化で認知度が広がったとされている。この言葉が世間に浸透してから5年後の初夏、都内で行われた婚活イベントに壁ドンが初導入された。さっそく現地調査し、漫画や映画ではない、現実世界でのリアルな浸透度を探った。
壁ドンとは、主に男性が女性を壁際に追い詰め、手をドンと突いて顔と体を密着させた状態で求愛する行為。東京・銀座で開催された40~50代の男女を対象とした婚活イベント「大人のドキドキ婚」で実現した。盛り上がりそうなのは20代くらいの世代かと思われるが、初導入に当たり、なぜ、中年世代をターゲットにしたのか。
主催したリンクバルは「仕事でキャリアを積み、安定期を迎える40~50代だが、理性的な考えによって感情に従う本能的なパートナー探しをできなくなっているのでは。このドキドキ感だけでパートナーを見つける企画です」と意図を説明。12人の男女が参加した。
会場には「もし壁」という名称のボックス型体験装置が置かれた。株式会社「ピラミッドフィルム クアドラ」が昨年12月に開発。今年から街コンや映画イベントで使用されたほか、口臭ケア製品のPRイベントでも活用された。高さ約2メートル、約1メートル幅の箱に男女が約15センチの距離で入り、まず10秒間、互いに壁ドンで交流後、カーテンが降り、2人だけの空間でさらに10秒間…。この間、密室の壁に取り付けられたセンサーで手のひらの脈拍、発汗、温度を計測し、2人のドキドキ度合いでマッチングが決まる。その結果、2組のカップルが誕生した。
参加者に話を聞いた。都内の40代女性は「ドキドキしました」、千葉県の40代男性は「満員電車と同じだなと。面白かった」。都内の40代男性は「好意を持った女性に対する数値が80%だったのに、男性とやったらなぜか互いに100%。でも、同性の顔見知りが増えるのも心強い」と前向きに受け止めた。
リンクバルの広報担当・出来千春さんは「通常40~50代対象のイベントでは1対1でプロフィールを見ながら話すことが多く、どちらかといえば静かなのですが、これだけ盛り上がるのは珍しい」と手応え。「男女はもちろん、同性同士がやられてもいい。相性が合えば仲良くなる方もいます」とコミュニケーションツールとしての応用も示唆した。
神奈川県の50歳女性は「8回もやってドキドキした」と笑顔を浮かべながら「前から“壁ドン”やってみたかったんです。道を歩いている人に『壁ドンやってください』なんて頼んでも“おかしい人”だと思われるだけ。現実にそういう機会はないので、これまで自分の中で“路地裏に連れ込まれてドン!”という状況を空想してきました」と告白した。
壁ドンは外見上、女性が受け身で男性がイニシアティブを取ると見られがちだが、むしろ逆に女性の方が“壁ドン願望”が強いという、一つの傾向が浮上した。「だから、もう、楽しいです!」。この女性にとって、願ったりかなったりの企画だったと言えよう。(デイリースポーツ・北村泰介)
〓はハートマーク。