事務所のデスクの後ろで「助けてにゃ~」と鳴いていたメタボの野良猫
タボくんは、子猫の時、誰かに空き地に捨てられた。そこで暮らす親子の野良猫の仲間に加えてもらい、その可愛らしさゆえに、たくさんのボランティアがエサを持ってきていた。しかし…。
■誰かに捨てられた子猫
青森県に住む米沢さんは、自宅や職場からほど近いところにある空き地で暮らしていた野良猫の親子に、たびたびエサをあげていた。推定4歳の母猫と推定1歳の男の子だった。ところが、2008年6月頃、突然1匹の子猫がそこに現れた。母猫が出産したわけではないので、誰かが子猫を捨てたと考えられている。推定生後2カ月だった。
空き地にいたお母さん猫は、実の子ではないものの子猫のことを可愛がったそうだ。お兄ちゃん代わりの猫も子猫を受け入れ、3匹は仲良く暮らしていたという。米沢さんがはじめて子猫を発見した時、まだ乳飲み子だった子猫は、お兄さん猫のお腹のところに潜ってお乳を吸う仕草をしたという。
「その可愛い姿には、思わず一目惚れしました」
可愛い子猫が加わったことで、エサをあげる人が増え、米沢さんが知っているだけで10人はいた。おかげで3匹の猫は、食べるのに困ることはなかった。米沢さんも、朝晩2回は必ずエサを運び、出張で行けなかった日は、駅から空き地に直行した。
■事務所に入ってきて、「助けてにゃ~」
青森県の冬は寒く、零下10度くらいになることも珍しくはなかった。
「積雪1mを記録する厳しい冬は、まだ1歳にも満たない子猫にとって辛い季節だったでしょう。でも、発泡スチロールでできた小屋に雪が被さり、かまくらのようになっていたので、ある程度保温ができたと思います。出入り口になるところは、敷地の所有者や猫のことを気にかけていた人たちが開けていました」
ところが、翌年の春頃、お母さん猫に実の子が誕生したため、お兄ちゃん猫と子猫は、空き地を追い出されてしまった。米沢さんは、ある日突然消えた子猫のことを心配して探していた。
2009年6月、米沢さんがいつものように職場で仕事をしていたら、子猫だったその猫が、米沢さんの背後にいて、まるで「助けてにゃ~ん」と訴えかけてきたという。
「事務所の窓も入り口のドアも開け放していたので、どこからでも入って来られる状態でした。やせていて、足に少しケガをしていて、辛い日々を送っていたのだろうと思いました」
たった1匹であてどもなく放浪していた猫のことを思うと胸が詰まり、米沢さんは猫を飼うことにした。
■猫と会話する毎日
6月下旬、米沢さんは、空き地で猫を捕まえてダンボール箱に入れたが、車に乗せると車体が震えるほど猫はブルブル震えていた。そのまま動物病院に連れていき、家に帰り、「タボくん」と名付けた。
「野良猫だった間に、餌をあげる人が多すぎて、すっかりメタボ体形になっていたからタボなんです」
最初、タボくんは部屋の隅っこや机の下で小さくなっていることが多く、網戸から脱出しようとすることもあり、環境になれるには少し時間がかかった。
2019年5月で11歳になったタボくん。米沢家の子になってから10年経ち、すっかりスリムになった。今では“ネコ語”や目を使って、米沢夫妻といろんな会話ができるのだという。
米沢さん:「今日もお薬飲んだら美味しい朝ごはんですよ」
タボくん:「薬苦くて嫌だけど、ごはんのために我慢しますニャ」
タボくん:「もう眠いので早く寝ましょうニャ」
米沢さん:「わかったけど寝る前に歯磨きね」
タボくん:「短めに終わらしてニャ」
タボくんは、子猫の頃、いろんな食べ物をもらって育ったせいか、とてもグルメで、ホタテが大好き。いまも、毎日ホタテを食べているそうだ。
(まいどなニュース特約・渡辺陽)
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