暴力団員との“密接交際者”の線引きとは スリムクラブの処分受け、小川泰平氏が解説
吉本興業所属のお笑いコンビ「スリムクラブ」の真栄田賢(43)と内間政成(43)が2016年に川崎市内で指定暴力団幹部の誕生パーティーで演芸を提供してギャラを受け取っていたことが明らかとなり、無期限謹慎処分となった。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は29日、デイリースポーツの取材に対し、反社会的勢力といわれる組織に属する人物には実業家としての側面もあり、見極めが難しい現状を指摘した。
小川氏は「この暴力団幹部は飲食店等の経営でも成功しており、外見上は暴力団員などとは分からない雰囲気の人です。職業を聞かれれば『飲食店のオーナー』と答えていると聞いている。報じられている誕生パーティーも、本人以外、出席者は全員が飲食店関係などの者だった。一見して“カタギのパーティー”であり、指定暴力団幹部の誕生パーティーだとは知らなかったのではないか」と推測した。
さらに、小川氏は「暴対法や暴力団排除条例などで規制が厳しくなり、昔なら『この店は●●組の人がやっている店』と分かりやすかったが、今はフロント企業として経営しており、暴力団かどうかは分からないことも多い。実際に会っても、そういう気配も出していない。入れ墨を見せるわけでもないですし」と背景を説明した。
同氏は「カタギであっても暴力団員に接触すると暴力団排除条例で『密接交際者』となる可能性もある」と、警視庁のHP「東京都暴力団排除条例Q&A」を参考に解説した。
「暴力団若(も)しくは暴力団員と密接な関係を有する者」には4例あり、そのうち「暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者」について、(a)相手方が暴力団員であることを分かっていながら、その主催するゴルフ・コンペに参加(b)頻繁に飲食(c)誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席~というケースがある。
小川氏は「今回の件は(c)に該当するように思われるが、多数の暴力団員が集まっているわけではないので該当はしない」と指摘。また、暴力団員と「交際していると噂」「一緒に写真に写った」「幼なじみの間柄という関係のみで交際」「親族・血縁関係者」といった場合は「暴力団関係者」とはみなされないとされる。
同氏は「暴力団の新年会や忘年会等、暴力団員が多数集まる行事に参加していると、密接交際者として認定されるが、相手側はそういったにおいすら出していなくて見分けが付かないことも多い」と付け加えた。
興行の世界では古くから密接な関係にあった“ヤクザと芸能”。小川氏は「(暴力団関係者は)人を介して、ある程度、著名な芸人さんに声をかける。その相手に『5人くらい連れてきていいよ』と言うと、テレビに出ていない芸人さんを連れてくることもあり、無名の若手時代から付き合いが始まるケースもある」と、一部ではあるが、背景となる一例を明かした。
小川氏は「警察の資料的な映像では、暴力団の新年会や忘年会に、そこそこ有名な芸能人の方が出席されている姿が映っているのを実際に見たこともある。近年でもそういう場面はあった。果たして、それが何年前までは不問で、何年前からはダメということになるか」と線引きが難しい状況も指摘した。