参院選でも争点・老後資金2000万円問題 焦る前にまず試算! あなたが必要な金額は

「95歳まで生きる場合、夫婦で2000万円の蓄えが必要」と試算した金融庁の報告書が物議を醸しています。7月4日に公示された参院選の争点にもなるとみられていますが、「税金や社会保険料をたくさん払っているのに、こんなに貯めないといけないの……」と、やりきれない気持ちになるのは無理のないこと。

一方で一連の話題を見ていると「2000万円」という数字だけが一人歩きしているようにも感じます。報告書の内容はあくまでも平均額からの試算なので、当然ながら老後に必要な資金は人によって異なります。

例えば金融庁の資料の根拠となった「総務省 家計調査報告(2017年)」によると、高齢夫婦無職世帯の1月あたりの支出額が約26.4万円となっていますが、持ち家があるなら住居費用の約1.4万円はもっと抑えられますし、食費の約6.4万円も暮らし方次第で節約することが可能でしょう。

一方、収入に関しても1月あたり約20.9万円なっていますが、夫婦で長期間会社員をしている場合などはもっと多くなりますし、反対に自営業の夫婦やシングル世帯、国民年金の未納期間がある場合などはこれよりも少なくなります。「2000万円貯めないと!」と焦る前に、まずは自分の老後にかかるお金を試算してみることが大切です。

■焦る前に「自分の老後に必要な金額」の試算を!

▽収入

まずは自分がもらえる公的年金の額をチェックしてみましょう。日本年金機構の「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)を使えば、もらえる年金額が簡単に試算できます(利用登録要)。

会社員の人はこのまま働き続けた場合の退職金や企業年金の額も確認を。他にも個人型確定拠出年金や保険の満期金などがどのくらいもらえるかも調べてみます。

▽支出

月々かかる支出については、先ほどご紹介した「夫婦で月26.4万円」が一つの目安になります。暮らし方によってはもっと節約できるかもしれません。ただし月々の支出とは別に、介護や家のリフォームなどが必要になったときには、まとまったお金が必要となります。これら「もしものお金」は、たくさんあるに越したことはないのですが、夫婦で1000万円前後あれば、ある程度の安心感が持てるでしょう。これらの予想される収入と支出の差額が「老後に必要な資金」ということになります。

■老後への不安を解消する暮らし方とは?

実際に試算してみて「現状では老後の生活が厳しそう」と感じたら、次のような方法で老後の不安を一つ一つ解消していきましょう。

(1)不足する老後資金の準備をコツコツ準備

まとまった老後資金を用意するためには、基本的に毎月の収入額から積立などでコツコツと貯めていくしかありません。コツコツ貯める方法の王道は「財形貯蓄」や「自動積立定期預金」。ある程度貯まってきたら金利の高いネット銀行の定期預金に預け替えるのもいいでしょう。余裕資金があり、ある程度の変動リスクに対応できるなら、税制面での優遇が大きい個人型確定拠出年金「iDeCo」や「つみたてNISA」を活用するのもおすすめです。

(2)住宅ローンは早期返済を!

住宅ローンの返済が定年後に持ち越されてしまうと、年金や退職金の中からローンを払わなければならず、家計に大きな影響が出ます。返済が退職後以降にずれ込みそうな場合は、なるべく繰り上げ返済を。繰り上げ返済は借入時から早く行うほうが利息の軽減効果が高くなります。場合によっては、貯蓄よりローン返済を優先した方がいいことも。

(3)老後の暮らしに向けて家計をスリム化

老後は収入が限られてしまうので、月々の収入内でやりくりする金銭感覚が大切になってきます。少しでもやりくりがしやすくなるよう、老後が近づいてきたら家計のスリム化を。

特に家計を圧迫しがちなのは毎月・毎年支払っている「固定費」です。使っていないのに年会費だけ払っているクレジットカード、めったに見ない動画サービス、惰性で購入している健康食品などはないでしょうか。スマホはキャリアから格安SIMに乗り換えるだけで費用を大幅に抑えられます。万が一に備えて加入している生命保険についても、子どもが独立したタイミングで死亡保障の減額や、必要のない特約の解約を検討してみましょう。

(4)老後の働き方を考えておく

老後にも働くことができれば、資金面で心強いのはいうまでもありません。実際に働くかどうはともかく、いざとなったら働けるという目処があるだけでも安心感につながります。勤めている会社の再雇用をはじめ、経験や得意分野を生かして働けないか、早い段階から模索しておくといいでしょう。

■やるべきことをやったらあとは「気にしない」

老後に関しては予測できないことも多々あります。大きな病気をしたら?国の制度が変わったら?と様々な事態を想定しすぎると、いくらお金を用意しても不安から逃れることはできません。

上記で紹介したようなことをできる範囲でやっておけば、あとは「なるようになる!」と、割り切って暮らすことも大切。悩みごとを気軽に相談できる家族や友人を持ち、健康に過ごすことができれば、それが一番の財産です。お金に限らず、老後を楽しく暮らすためのイメージをしておくことが将来の不安をなくすための特効薬と言えそうです。

(ファイナンシャルプランナー・田中瑛子)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス