震災で離ればなれになった猫 無事保護するとお腹の中には赤ちゃんが
2011年の東日本大震災では、多くの人命が失われ、それと同時にペットたちも翻弄された。鈴木さんも当時、猫と共に避難し、震災がきっかけで生まれた2匹の子猫を引き取ることになった。
■大震災で猫と離れ離れに
福島県に住む鈴木さん一家は猫が大好き。戸建ての家を建てたら猫を飼おうと決めていた。2009年12月、念願かなって、ある青果店で生まれた三毛猫の子猫を譲渡してもらった。初対面でも手をぺろぺろ舐めてくる甘えん坊で、鈴木さんはメロメロに。はなちゃんと名付けられた猫は、鈴木家初代の猫になった。
鈴木さんの実家にも飼い猫がいたのだが、2011年3月11日、東日本大震災が起こった時、鈴木さんの実家の家族は、すぐに家に帰れると思って、猫を置いたまま鈴木さん宅に避難した。ところが、道路が封鎖され、すぐには帰れない状況に。
「15日までに父が1~2回エサを置きに行ったのですが、兄にしかなついていなかったので、一生懸命呼んでも出てこなかったそうです。とにかく食べ物に困らないように、エサをいっぱい置いてきたと聞いています」
16~24日までは、エサも置きに行けない状況になり、みんなは猫のことを心配した。24日にお兄さんが実家に入って、猫の名前を呼ぶと出てきたので保護することができた。当時、山形県に避難していた両親は、猫が無事だったことを知って、喜んだ。
■ストレスでフケが増えた猫
鈴木夫妻は、ご主人の仕事の関係で、茨城県のビジネスホテルに避難していた。仕事はビジネスホテルの近くで再開したが、はなちゃんは、ホテルから車で1時間ほどかかる職場の託児所で、たった1匹で暮らすことになった。ストレスではなちゃんは、フケのようなものがたくさん出てきた。自宅から託児所に移動する車の中でも過呼吸のような状態になって、夫妻は心配した。ご主人は、仕事が終わると毎日はなちゃんの様子を見に行った。
3月25日、ビジネスホテルから自宅に戻ることができたが、同じ日に実家にいた猫のケロロちゃんを引き取ることになった。
「家に帰ったら知らない猫がいたというのでは、ただでさえ震災のストレスで参っているはながびっくりしてしまうので、ひとまず、私たちとはなが先に帰って、午後にケロロを連れてきてもらいました」
■想定外の妊娠
思わぬことだったが、ケロロちゃんは妊娠していた。実家では完全室内飼いしていたので不妊手術をしていなかったのだが、震災の時に開いたドアから外に出てしまい、その時に妊娠したようだった。ケロロちゃんのお腹は日に日に大きくなって、5月21日、鈴木さん宅で無事3匹の子猫を産んだ。
3匹の子猫のうち、キジトラの男の子はけーすけ、茶トラの男の子はかえでと名付けられた。残る1匹は、鈴木さんの妹が引き取った。けーすけくんは、まるで家の主のように振舞い、堂々としている。はなちゃんは人を噛むことがあるが、けーすけくんが「やめろ」と言いに来る。かえでちゃんは、おっとりしていて、なぜか「わんわん」と鳴く。
3.11の大震災や4月11日に磐城で揺すった地震もひどく、常に揺れているような感じだったという。はなちゃんは地震が揺すっても平気だが、けーすけくんはどこかに隠れてしまう。震災から8年、やっと動じなくなったそうだ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)