ヤギを飼ってみませんか 近年再び注目…人懐っこく好奇心旺盛、そしてカワイイ!

当院の患者さんには、オスのトカラヤギ、もうすぐ3歳のムクちゃんと、メスで雑種のハナちゃん(年齢不明)がいます。ヤギをペットに…というと、『ええ~!!』と驚かれることがありますが、ヤギは、ほんの半世紀前までは、日本の農家で一般的に飼われていた家畜のひとつです。

全国的にはすっかりマイナーになっていますが、今でも九州南部や沖縄ではたくさん飼われており、近年再び注目が集まっています。というのも、ヤギは牛・豚などと比較すると小さくて軽く、高齢者や女性にも取り扱えることから、情操教育や伴侶動物・ペットとして飼育される例が増えているのです。学校飼育動物として、ヤギを導入する学校もあります。ちなみにムクちゃんは体重29キロで、小柄なゴールデンレトリバーくらいの大きさです。ハナちゃんは体重17キロで、大柄なビーグルくらいですね。

ヤギは犬猫と異なり草食動物なので、庭やその他の土地の除草にも活躍の機会があります。メスのヤギであれば、お乳も採れます。草が豊富にあれば、犬猫と比べて食事代は安くあがります。ちなみにムクちゃんたちの食事代は、2頭で月3000円ほどだそうです。

一般的なヤギの性格は…警戒心は強いのですが、飼い慣らすと人懐っこく、好奇心は旺盛です。原産が山岳地帯なので、山や高原などの高いところを好み、湿気や雨を嫌います。ヤギ1頭に必要な飼育スペースは、当然のことながら品種・性別・年齢・体格および単飼か群飼かによって異なりますが、一般的には成ヤギで2.0~4.0平方メートルと教科書にはあります。ムクちゃんとハナちゃんは教科書の2倍くらいのゆったりスペースで飼われています。

ムクちゃんは若い男の子なので、ヤンチャです。お父さんにかなりなついていて、角突きしてジャレてきます。なんにでも体当たり、角当たり…してきますので、小屋は頑丈なもので製作しないといけません。ハナちゃんは女の子らしく、おとなしいです。散歩するときは、ムクちゃんをリードにつないで歩くと、その後ろをハナちゃんがノーリードで付いて歩いて行きます。かわいい!

ヤギを飼育するときには、ヤギ特有の鳴き声やにおいが伴うために、近隣住民の方のご了解も必要となってくる場面もあるかと思いますが、ムクちゃんの家の周囲といえば…こんな感じです。

ヤギの寿命は10~12年といわれています。飼うのに適した環境温度帯は、トカラヤギでは20~28度といわれていいますが、暑さ寒さにはある程度耐えられます(シバヤギが、北海道でも屋外で飼われていたのを知っています…)。ムクちゃんたちは、夏の暑い日には扇風機を回してもらっていて、気持ちよさそうにしていました。冬は特に暖房は入れていないそうです。

先程もお話ししましたように、ヤギは草食動物です。肉やお菓子は食べません。しかし好奇心が旺盛なので、差し出されるとそれらを食べてしまうことがありますので、注意が必要です。有名な童謡にありますね、お手紙を食べてしまう「ヤギさんゆうびん」…昔の紙は植物が原料であったため、ヤギは紙も胃の中で分解できました。しかし、今の紙は植物以外のものが入っている場合もありますので、決して与えないでくださいね。

草食動物は、肉食動物以上に消化管内の細菌たちに頼って生きていますので、おかしなものを食べてその細菌バランスが狂うと、命にかかわります。ヤギは生きるのに必要なエネルギーの実に70%を、消化管内の細菌がつくっている揮発性脂肪酸というものから得ています。ヤギは草を食べますが、それを最初に食べるのは消化管の細菌で、その細菌が活動することで消化しやすくなった草を、ヤギが消化するといった感じですね。

最近でこそ、ウサギは草食動物で粗食であるという認識が浸透したと思われますが、一昔前は、ウサギの飼い方がわからないままにお菓子やパンを与えて病気にさせてしまうといった事例がありました。ヤギもまた草食動物ですが、そういった人間とは食性がかなり異なる動物を飼育するということには、地球には様々な生き物が共存しているといったことを教えてくれる、教育的な意義があると私は思います。

ヤギを飼育する方には心強い、全国山羊ネットワークというサイト(http://japangoat.web.fc2.com/)があります。なにかあれば相談されると良いでしょう。また、ヤギを飼うときには、家畜保健衛生所へ毎年定期報告する義務があります。家畜保健衛生所にも問い合わせてみてくださいね。

いかがでしょうか?ペットとしてのヤギという選択肢も、状況が許せば…と思います。

(獣医師・小宮みぎわ)

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