音声翻訳機「ポケトーク」の実力は? 導入半年、外国人観光客が殺到するJR西の駅員に聞いてみた

 日本を訪れる外国人観光客が増え、インスタ映えするスポットを求めて、電車を乗り継ぐ人の姿も一般的になっています。と同時に、迷ったり、分からないことがあったりして立ち止まる人もたびたび…。国籍も言語も多様化する中、JR西日本では今年1月、主要駅にソースネクスト(東京都)の音声翻訳機「POCKETALK(ポケトーク)」を導入し、順次拡大しています。導入から半年、現場はどう変わったのでしょう。京都の観光地の駅を取材しました。

 向かったのは、JR嵯峨野線の嵯峨嵐山駅。嵐山といえば、春と秋がハイシーズンとされますが、京都発亀岡行き普通電車(4両編成)は外国人観光客でぎゅうぎゅう詰め。飛び交う言葉も、英語、中国語、ロシア語、ポルトガル語(っぽい)、ベトナム語(多分)…と、話している内容はサッパリ分かりませんが、多様化を肌で感じます。

 JR西日本によると、同駅の1日乗降客数は昨年度1万6448人で、5年前の1・3倍超に。名所の一つ「竹林の小径」がインスタグラムで拡散され、同じくインスタで人気に火が付いた伏見稲荷大社最寄りのJR奈良線稲荷駅とともに、外国人観光客の多さが際立っているといいます。昨年からは日中(午前8時半~午後4時半)に、英語と中国語に対応できる通訳を配置。さらに今年1月にはポケトークを導入しました。

 話を聞いた駅員の吉川直輝さん(31)は入社6年目。小・中・高校と嵐山で育った、生粋の地元人です。「僕が子どものころは、春と秋以外、特に2、6月なんて道を歩く人もいないぐらいだったんですが…」と戸惑いつつ、外国人観光客が増えるにつれ、道案内や問い合わせなどを受ける機会も増えてきたといいます。

 「内容は『竹林にはどうやって行けばいいか』『トロッコ列車の乗り場はこっちでいいのか』などのほか、切符の乗り越しやICカードの処理についてが多いですね。夕方以降はお客様の数こそ減るんですが、通訳の方もいませんし、宿直は1人勤務。落とし物などの場合は形状や乗っていた車両など詳しく聞く必要もありますし、大阪方面への乗り継ぎなら路線や時間も確認しなければならないので複雑で…」といいます。

 ポケトークが導入される以前は、駅事務所に通訳につながる電話があり、それで対応していました。ですが「まず、お客様にどの言語が話せるかを聞いて、プッシュボタンで選んでつないでもらい、状況を説明し、電話をお客様に代わる。早くても数分はかかってしまい、何より対応言語も英語や中国語など4か国しかありませんでした」と振り返ります。

 一方、ポケトークが導入された後は対応言語が74に増え、会話が難しくても直接端末を渡して言語を選んでもらえるので、「使い方さえ慣れれば、以前よりずっとスムーズにできます」とか。「例えば、スマホの音声翻訳などでは『鶴(crane)』と『橋(bridge)』に分かれてしまいがちな大阪環状線の鶴橋駅も、ちゃんと『鶴橋(Tsuruhashi)』と地名で認識してくれる。僕は英語も中学生レベルで、他の語学も全然。正直、以前は腰が引けてしまうところもあったんですが、今は“待ち”の姿勢ではなく、積極的に声がかけられるようになりましたし、翻訳を見て少しずつ表現も覚えてきた気がします」と話します。

 そうこうしていると電車が到着。吉川さんはガイドブックと案内表示とをにらめっこしていた中国人グループに声をかけると、ポケトークを使って、トロッコ列車の駅の行き方や、何分おきに出るかなどを説明しました。男性は納得した様子で「家族9人で来たんだけど、小さい子どももいて困っていた。助かりました」と去っていきました。

 ちなみに記者もポケトークを使ってこの男性に質問をしてみましたが、日本語と同じように、間に修飾語を挟みながらタラタラと聞いてしまったため、翻訳された文章もまどろっこしく、「???」という反応に…。「文章より単語の方が、伝わりやすいですね」と吉川さん。日本語だろうと外国語だろうと「翻訳しやすい質問」=「分かりやすい質問」ですよね。猛省です。勉強になりました!

(まいどなニュース・広畑 千春)

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