ガンダム総監督「富野由悠季の世界」…とっても“面倒くさい”回顧展の簡単な楽しみ方とは

 ガンダム40周年を記念して福岡市美術館で始まった特別展「富野由悠季の世界-ガンダム、イデオン、そして今」。これから1年以上をかけて全国6会場で開催。10月12日からは兵庫県立美術館でも開かれます。この機会にガンダムの世界には触れてみたいと足を運ぶ方だけでなく、中にはガンダム好きのパートナーに連れて行かれる方もきっと多いことでしょう。そこで、ライト層の方でも気軽に堪能できるような、この回顧展の楽しみ方を紹介しましょう。

 アニメ作品の資料展示には、ひとつのパターンがあります。それは、「企画書」「絵コンテ」「動画」の並列展示です。このうち「絵コンテ」と「動画(アニメ)」は同じシーンを紹介していることが多く、一つの流れとして捉えると見やすいです。これを踏まえて「富野由悠季の世界」展を見ると、実はとても「面倒くさい(富野監督談)」出来なのです。

 理由としては、富野監督が「演出力」や「文章力」に秀でているという点にあります。展示の「企画書」が濃密すぎるのです。文章量が多く、しかも文章力が高い。子細に目を落とせば作品の世界観、タイトルやキャラクター名が決まるまでの変遷までうかがえる。私のような「トリトン以降の富野監督全作品を最低一度は見ている」ような濃い目のファンでさえ初見の資料が多く、全てに目を通して内容を理解するには、丸一日以上かかることは必然です。そんな展示を初デートに選んで「楽しかった?」なんて彼女に聞くと、後のフォローが大変になることは間違いないでしょう。

 そこで 「せっかく一緒に連れて行かれるなら楽しみたい」という方へ向けた、今回の回顧展のポイントを押さえた楽しみ方を3つ紹介します。

(1)「絵コンテ」→「動画」の流れで見る

 「絵コンテ」で紹介したシーンを最後にまとめて「動画」で鑑賞できるという展示の流れになっています。絵コンテには富野監督の文章力に富んだ指示が書き込まれていますので、対比してみると面白いでしょう。

(2)「企画書」は各作品の「ドラマ」に注視する

  科学やSFに造詣が深い富野監督ですが、作品でこだわったのは「ドラマ」の部分。「絵コンテ」「企画書」を本気で読みに行くと、一日で理解できるかどうかも怪しいほど濃密です。ここは富野監督がどの作品でも力を入れていた「ドラマ」の部分にさっと目を通し、文章の筆力や達筆さを堪能しましょう。特に「富野節」がさく裂している箇所などを注目すると楽しいでしょう。詳細は図録を後で買って復習するといいですよ。

(3)大御所クリエーターや富野監督直筆のイラスト原画を見逃すな!

 なかなかお目にかかれない直筆のイラスト原画、原画、セル画が多数展示されています。例えば、安彦良和、大河原邦男、湖川友謙、塩山紀生、永野護、いのまたむつみ、安田朗、などなど。さらには富野監督自ら描いたラフスケッチには数々のモビルスーツの原案が!イラスト目線で見に行っても、充分楽しめる展示内容です。

  ◇  ◇

 展示の数々の重要なポイントへスムーズに誘ってくれるのが音声ガイド。声はベルリ(石井マークさん)とアイーダ(嶋村侑さん)です。ガイドの内容も気軽に楽しめるものですので、なるべく借りると良いでしょう。

 そして濃密な展示を堪能した後は、記念グッズ販売ブースへ。図録や著書、ハガキやバッグにTシャツまで、隅々まで「富野節」にあふれていますよ!さらには勢いをかって、帰りに「RX-78ガンダム」のガンプラを買って作って、銀色に塗って仕上げましょう!

(サンテレビ・那須惠太朗)

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