犬猫に手作りごはんのすすめ…お家で作れる!動物の「種」に適した食事のポイント

 犬猫に市販のペットフードだけでなく、手作りのごはんをあげてみませんか。人間のごはんをつくるついでに、ちょっとした工夫をするだけで、栄養学的にもメリットの大きい健康的なごはんをつくることができます。具体的にどのように用意すればいいか、動物の栄養に詳しく、獣医師や飼い主さんたちに犬猫の健康的な食事について広める活動をされている荒木幸子先生に伺いました。(獣医師・小宮みぎわ)

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 現代のペットはほぼ100%飼い主から与えられる食事で暮らしていますので、飼い主がペットの食事管理をしなくてはなりません。そのときの栄養の考え方にはいくつかありますが、より動物種に適した自然に近い食事を推奨する獣医師が増えてきています。

 犬と猫の動物種としての代謝や食性を考えると、猫は完全肉食動物です。また、雑食といわれる犬であっても、人と比べるとずっと肉食度が高いと考えられます。どちらも野生では、獲物を捕獲し、生のまま丸ごと食べてきました。

 近年、このような動物種に適するという考えで作られた「ローフード(本来の食事に近いと考えられる火を通さない生の食事)=生食」を販売する会社が増えてきました。がん末期で食が細くなった犬で、ドライフードは拒絶しても、最後まで喜んで食べてくれたのはこのような生食でした。

 自然に近い理想的な食事のバランスをふまえながら、ペットたちに手軽に手作りごはんを用意するポイントをご紹介します。

■1)肉食を意識した食材のバランスを

 犬、猫の食事における、自然に近い理想的な食材の比率は、以下のようになります。

・猫 動物性の食材 90~85% : 植物性の食材 10-15%

・犬 動物性の食材 70%程度 : 植物性の食材 30%程度

* 動物性の食材=肉・魚・卵など 植物性の食材= 野菜・いも類など(いずれも量g)

 市販されているローフード(生食)はだいたいこのような割合のものが多いです。実際には、犬の場合は動物性食材と植物性食材を50:50程度にしても、優秀な食事になります。猫の場合には、もともと肉食ということもあり、体が許容できる炭水化物量が限られているため、野菜や穀類を増やしたとしても2割程度が限度でしょう。

■2)カルシウム源を必ず加える

 家庭で手作りするごはんで不足していまう栄養素ナンバーワンは、なんといってもカルシウムです。 犬猫は野生において獲物を基本的に丸ごと食べるため、カルシウムを生の骨から自然に摂取できていますが、人の手で用意するごはんでは、カルシウム源を足してあげなくてはなりません。特に成長期のカルシウム不足は致命的な健康上のリスクとなりますので注意が必要です。骨ごと挽いてあるミンチ肉や骨粉サプリメント(人用のもので良いです)などで補うとよいでしょう。(腎臓疾患などでリンの接種制限があるペットは、獣医師に相談してください)

■3)内臓肉を加える

 犬猫が獲物を食べるとき、特に内臓から先に好んで口にするといわれます。レバーや心臓などには、筋肉部には少ないビタミンやミネラルなどの微量栄養素が濃く含まれているため、筋肉だけの食事ではこれらが不足します。家庭の料理では、手軽に購入できる鶏ムネ肉やささみなどが使われることが多く、筋肉しか含まれないレシピがほとんどです。意識的にレバー(肝臓)やハツ(心臓肉)、マメ(腎臓)などの内臓肉を活用してみましょう。

■4)野菜はすりつぶすかピューレ状にする

 肉食動物には人間のように食事をよく噛んで食べるという習性がありません。すりつぶすための臼歯も私たちのように発達していません。 獲物となる草食動物の胃腸内に半消化された野菜が残っていることがあり、それを食べるかたちで野菜の栄養分を取得しています。

 犬猫に野菜の栄養を十分に吸収できるようにするためには、野菜の細胞壁を壊してから与える必要があります。野菜はすりつぶすかピューレ状にして与えるのが理想的です。 人の見た目には美味しそうに感じられる野菜ゴロゴロシチューなどのメニューは、 犬猫の胃腸では消化しにくいのです。

■5)食材はローテーションする

 家庭で食事を用意する場合、使い慣れた食材に偏ってしまうことがよくあります。しかし、鶏肉に含まれる栄養素と牛肉や魚に含まれる栄養素は異なります。人と同じですが、肉も野菜も同じものを続けて与えずに、ローテーションしないと栄養がかたより、長期的には不足する栄養素が出てきます。

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 上記5点をふまえて、どのようなごはんを用意すればよいか、イメージしやすいように、5kgの犬の1日分の食事の例を示してみます。

・鶏胸肉(皮と脂を半分とる) 80g 

・鶏レバー 10g

・鶏ハツか砂肝 25g    

・骨ごとミンチ肉(骨を3割程度含む)35g

・野菜(人参、ブロッコリー、かぼちゃ、白菜など、ピューレ状かすりつぶす)70g

・オイル(亜麻仁orエゴマorオリーブor魚油など)小さじ1程度

 これを1日2回に分けて与えます。(シニア犬や猫の場合には少量頻回が望ましい)

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 いかがでしょうか?これらは、最初はお鍋に材料を入れて少量の水で蒸し焼きにして、煮汁ごと与えてください。慣れてきたら徐々に火を通す時間を減らしましょう。 それでもしかし、いきなり100%手作りにすることはすこしハードルが高いかもしれませんね。次回の記事では気軽に始められる、新鮮食材を使ったトッピングをご紹介します。

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◆荒木幸子(あらき・ゆきこ)米国LVT・動物看護師・ペット栄養管理士、ヤマザキ動物看護大学講師。米国にてLVT (動物看護師)免許を取得後、犬猫のホリスティックな自然医療や栄養学について学び、2017年に帰国。現在は犬猫の健康的な食事を広めることを目的に「犬猫ホリスティック栄養学の会」を主催し、獣医師などの医療従事者や一般の飼い主向けに、セミナーや勉強会を開いている。

犬猫ホリスティック栄養学の会 https://www.holisticone.net

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