神戸市民が愛する水族園が映画になった 生き物たちも熱演!
スマスイの愛称で親しまれる神戸市立須磨海浜水族園を舞台にした本格的な映画が完成した。タイトルはズバリ「スマスイ」だ。
同園は1957年に神戸市立須磨水族館として開業。87年には特徴的な三角屋根の本館を中心とする姿に全面改装し、名称を現在の須磨海浜水族園として多くの市民に愛されてきた。しかし30年以上が経過し、老朽化のために2023年度中の建て替えが決定している。
そこで次の世代へ現行施設の記憶をつなぐための映像製作が企画される中、市民に楽しみながら観てもらう機会を作るため、単なる記録映像ではなく映画化に踏み切った。発案したのは同園飼育教育部の大鹿達弥さん。テレビ番組「探偵ナイトスクープ!」などにもたびたび登場し、ユニーク飼育員として知られる大鹿さんだがスマスイへの愛情は人一倍深い。前回の建て替え前の映像がほとんど残っていないことを悔やむ大鹿さんの思いに応えようと、仲間たちが立ち上がった。
映画好きが高じて2年前に神戸市民有志で「防災啓発ムービー 大災獣ニゲロン」を製作したチームが再結集。実は大鹿さん自身も「ニゲロン」に出演した経験を持っている。当時製作に関わったIT関連企業や放送局、NPO法人などに加えて、今回は地元の病院やタクシー会社などもロケ協力に名乗りを上げた。主題歌は「ニゲロン」に引き続き、神戸市立須磨高校出身のアコースティックデュオにこいちがオリジナルソングを提供する。
仕事を失い、妻に逃げられた主人公・田中一郎が、新しい職場に選んだスマスイで新米飼育員として奮闘するストーリー。就職活動と将来に悩む大学生カップルや、妻の仕事復帰を機に家族関係がぎくしゃくする夫婦、病を患い余命宣告を受けた医師とその妻。スマスイを訪れる3組がそれぞれのパートナーとの関係に向き合いながら未来への一歩を踏み出していく。そして一郎も人々の優しさにあふれたスマスイで成長を遂げていく…。
映画には神戸の劇団赤鬼のメンバーのほか、スマスイで働く多くのスタッフも自ら出演した。ラッコやゴマフアザラシ、ペンギン、熱帯魚など人気の生き物たちも総出演だ。なかでも一郎を見守るスマスイの主として登場するケヅメリクガメの大ちゃんは、ラジオ関西(神戸市中央区)でパーソナリティーを務める谷五郎さんのアフレコとともに名演技を見せた。
また、物語では阪神淡路大震災直後のスマスイの様子も描かれ、当時の職員たちの熱意が胸を打つ。
脚本を担当した劇団赤鬼主宰の川浪ナミヲさんは「スマスイは神戸市民にとって遠足やデート、そして子供と一緒に、人生で何度も訪れる場所。観る人が自分自身を投影できるシーンがきっと見つかるはず」と話す。
撮影は今年2月に行われた。一流の飼育員を目指して主人公が特訓する場面では、深夜に極寒のペンギンプールで潜水シーンを撮影するなど、出演者の体当たりの演技も見ものだ。
大鹿さんは完成した作品の試写を観て、市民と職員が支えてきたこれまでのスマスイへの愛着と今後への期待に人目をはばからず涙を流し、「1人でも多くの市民の皆さんに観てほしい」と願う。
映画「スマスイ」は8月9日(金)から9月1日(日)まで同園本館3階の特設シアターで毎日4回(各回70分)上映されるほか、9月下旬には神戸市内映画館での一般公開も予定されている。
(まいどなニュース/ラジオ関西)