風情が違う「西と東」2種類の線香花火 「正しい」遊び方や、長持ちさせるコツは?
細いこよりを親指と人差し指で持って、そーっとロウソクの炎に近づける。パチパチ、シュシュシュ…いい感じ…あっ!! あーあ。落ちちゃった…。
夏の夜の花火、ひとしきり華やかな手持ち花火や噴き出し花火で遊んだら、最後は「線香花火」。誰が一番長持ちするかって、競争しませんでした?あの、かすかに揺れる小さな丸い火の玉と繊細な火花を見ていたら、心まで静かになって、去り行く夏を実感したり…。
その線香花火が、実は江戸(東京)を中心に広まった東の花火と、関西を中心にした西の花火があるのをご存知でしょうか(私は恥ずかしながら初耳でした)。中国をはじめとした輸入品が席巻する中、国産素材にこだわった伝統的な花火づくりを続ける筒井時正玩具花火製造所(福岡県みやま市)に聞きました。
-線香花火って、東と西で違ったんですか!
「はい。最近一般的に見られる、カラフルな和紙で火薬を包み、こよりがついているのは関東地方を中心に広まった『長手』と呼ばれる『東の線香花火』です。一方、関西では米を作った後の『ワラスボ(ワラ)』の先に火薬を直接塗り付けた『スボ手』=『西の線香花火』が親しまれてきました」
-なぜ2種類あるんですか?
「花火は江戸時代、幕府に制限されて鉄砲を作れなくなった職人たちが作り始めたのが最初といわれています。関西では米作りが盛んでワラが豊富にあったため、スボ手が作られ、それが全国に伝わったようです。ただ、関東地方では西ほど米作りが盛んでなかったことから、ワラの代用品として和紙で火薬を包んだ「長手」が広まったといわれています」
-遊び方も違うんですか?
「ええ。もともと線香花火は、スボ手花火を香炉(線香立て)に立てて火を着けて遊んだのが名前の由来といわれ、その様子が浮世絵にも描かれています。だから西の花火は、風下に向いて先を少し上に向けて遊ぶと、よりきれいに楽しめます。一方、長手は、今一般的に遊んでいるように火薬を包んでいる側を下向きにして火を着けます。長手はスボ手より燃焼時間が長いのが特徴ですね」
-昔、スボ手がセットに入っていたことがありましたが、普通に下に向けてました…。ちなみに、線香花火を「長持ち」させる方法ってあるんですか?
「それは…無いに等しいですね」
-えっ!瞬殺?!
「はい。運と言いますか…」
-運?!いや、でも風とか持ち方とか、火のつけ方とか…何かないですか??
「うーん…。まあ、風は大事ですね。強ければ落ちてしまいますし、全くないと燃焼が進まないので、風下に向いて、そうっと息を吹きかけるとキレイに燃えるかもしれません。あとは、一般的な長手花火なら、真下に向けるよりも、気持ーち斜めに持つ方が、包み紙と火薬の接地面積が増えて、少しは支えてくれるかも…」
中国などからの輸入品が多くを占めるようになり、いまや「スボ手」の線香花火を製造するのは国内で同社だけ。「長手」でも3社だけといいます。同社では、あえて粋を極めた高級線香花火を作り、注目を集めています。
線香花火は、小さいながら「つぼみ」「牡丹」「松葉」「残り菊」の4種の姿を見せ、その十数秒は「人の人生のよう」とも言われます。小細工は無粋、ということでしょうか…。よし、次こそは…!!
(まいどなニュース・広畑 千春)