甲子園で運動会ができるって?土は持ち出しダメだけど…半世紀以上続く地元の伝統
日本の夏と言えば、何と言っても夏の甲子園です。異論は受け付けません。今年もたくさんの感動を生んだ大会が、大阪代表・履正社の初優勝で幕を閉じました。球児たち憧れの舞台「甲子園球場」は、阪神タイガースの本拠地ということもあって大阪にあると思われがちですが、正しい所在地は兵庫県西宮市。ここまでは割と有名な話ながら、ここ西宮の子どもたちが甲子園球場で“運動会”をしているって知ってました?
もちろん、運動会自体は各々の学校で開催されています。その上で同市では、市内の小学6年生と中学生が集まっての連合体育大会を毎秋開催。小学校が「西宮市立小学校連合体育大会」、中学校が「西宮市中学校連合体育大会」で、その会場がともに甲子園球場なのです。
しっとりとした内野の黒土に、緑色のじゅうたんのようなフカフカの芝生。日本一、いや世界一美しいとも形容されるグラウンドで“運動会”ができるなんて…甲子園を目指す球児たちから「ズルイ」という声が聞こえてきそうです。過去には夏の高校野球の兵庫大会が同球場で開催されていたこともあり、その頃は実際に「なぜ兵庫だけ?」という類のクレームがあったとか。
さて本題に戻ります。ではなぜ、甲子園球場で“運動会”が開催されるようになったのか?西宮市の学校教育課にお話を伺いました。
-どうして甲子園球場で“運動会”を
「体育振興と学校間の親睦を目的として1951年に西宮市中学校連合体育大会が始まりました。当時は市内にある私立の学校も参加していたようです。詳しい記録はあまり残っていないのですが、戦前にも似たような連合体育大会が開催されており、市民からの『復活させて欲しい』という声もあったようです。同じような経緯で小学校の方は1957年に始まりました。今では市内の公立小、中学校と養護学校の子どもたちが参加しています。なぜ甲子園球場なのか詳細は分かりかねますが、市内の児童、生徒が集まれる大きな会場として使用させていただくことになったのだと思います」
-甲子園ならではの決まり事は?
「髪を留める『ヘアピン』を使用することはできません。芝生の中に落ちたりすると、組み立て体操、ダンス、リレー競技などをしている児童、生徒はもちろん、大会の後に球場を使用される方々、つまり野球選手の方もケガをする恐れがありますので」
-ほかに球場を使用するにあたって制約はありますか?
「特にございません。演技をするにあたっては、球場の隅々まで使用することを許可していただいております。児童、生徒、保護者の待機場所としてスタンドも全面的に使わせていただいてます」
-最後に…甲子園の土って持って帰れるのですか?
「(笑いながら)それはダメです。そもそもグラウンド内に入るのは演技の時だけですから、そんな時間がありません。演技中に土を集めたりしたら危ないですし、持ち帰るための容器の持ち込みも禁止しています。体操服に付いてしまった土は別ですが、せっかく使わせていただいているのに、球場のものを取って帰るようなことはできません」
球児のように「甲子園の土」は持って帰れませんが、誰もが知る球場での運動会は一生の思い出に残ることでしょう。猛練習に明け暮れてもたどり着けるか分からないのが甲子園。そのグラウンドに市内の公立小、中学校に通っているだけで立つことができるわけです。どうです?西宮っていいところだと思いませんか?はい、実は私も生粋の西宮育ちです。必要以上に体操服を土まみれにしたのに、翌日には真っ白に洗濯されていたことを昨日のことのように覚えています。
(デイリースポーツ・弓場伸浩)