【京大・安部教授コラム】夏休み自由課題がまだ…早くきれいにできる科学実験

 「科学よもやま話=7=」

 大学のこの時期は夏休み期間で授業はありません。たまに夏休み長くて良いですねと言われますが、実はこの授業がない期間はかなり忙しいのです。8月は大学院の試験がありますので、いろいろな仕事が回ってきます。9月は学会シーズンですので国内外を飛び回ることが多いですね。私も昨年はイタリア、タイ、ドイツで行われた会議に出席し、関空が使えない期間もあったので、移動だけで疲れてしまいました。

 さて、大学は10月から後期の授業が始まるところが多いと思いますが、小中高ではそろそろ夏休みが終わるので、まとめて宿題をしている生徒さんもいるのではないでしょうか?

 私は計画的に宿題をするということが全くできませんでしたので、いまの時期は苦しい思い出しかありません(笑)。特に大変なのが、夏休みの自由課題ですね。科学の自由課題の中で、簡単、早く終わる、見た目もきれいなものを一つ紹介します。

 水性のペン、特に黒ペン、コーヒーフィルター、水。たった、これだけで、できる実験があります。短冊上に切ったコーヒーフィルターの下から2センチくらいのところに、黒ペンで直径5ミリくらいの円を書きます。短冊の下から水をしみこませると、黒が様々な色に分離していく様子が見えます。黒と思っていたものは、様々な色素から出来ていることがわかる瞬間です。

 中学生あたりに、この実験をやってもらうと結構面白がってくれますね。色の違う絵の具を混ぜると、元の色と異なることはみなさんよく知っていますよね。これは逆に、どの色とどの色から、この色ができているかがわかります。

 さて、この実験ですが、ペーパークロマトグラフィーと呼ばれています。水と仲良しの色素が早く分離して、フィルターに使っている紙と仲良しの色素はあまり動こうとしないので、色の分離ができるようになります。簡単な実験なのですが、じっくり考えると結構難しく、自由課題としては面白いと思います。

 ペーパークロマトグラフィーの応用例にはどのようなものがあるかを調べますと、妊娠検査薬やインフルエンザの判定などがあることがわかります。酒好きの私は、アルコール消毒しているのかインフルエンザにかかったことがありませんので、インフルエンザの判定に使われているとは全く知りませんでした。

 ◆安部武志(あべ・たけし)2009年、40歳で京都大学工学部研究科教授に就任。電池技術委員会賞、炭素材料学会学術賞などを受賞。京大工学部卒、大阪府出身、50歳。趣味はゴルフ。

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