弱気派が「支える」目先の株高、株4万円の声が聞こえる? 「もうはまだなり、まだはもうなり」

 株式相場はまだ上がるのだろうか。米中貿易摩擦で海外景気の先行きは不透明。国内も消費税率の引き上げで景気の不透明感が高まっている。しかし、足元では株式相場は上昇が続き、日経平均株価は13日まで9日連続で上昇。取引時間中に2万2000円の節目にワンタッチした。どうも相場の方向感は、景気に逆らって上がりそうな勢いだ。景気の先行きを考えると、ここから先はおそるおそる買いを入れることになりそうだが、いつまで上がり続けるのかが焦点だ。

 大手証券会社でストラテジストの経験を持つ名古屋商科大学の岩澤誠一郎教授に聞いてみると、「さらに上昇しても特に不思議でない」という答えだった。一部で景気の楽観論は出ているが、岩澤氏はそこに乗ろうというわけではない。景気の悪化を受けて株式相場が下落する前に、ふらふらと上がって高値を付けることは、よくあることだという。「2008年のような深い谷が待っているとは思わないが、最近の相場は2006~07年ごろの相場の雰囲気に似ている」というのが岩澤氏の見立てだ。

 06年の株式相場は「ライブドア・ショック」で始まった。前年の郵政解散相場ですでに高値警戒感が広がっていたため、堀江貴文氏率いるライブドアの強制捜査を受けて、個人投資家らが一斉に売買を手仕舞って相場が急落したのがライブドア・ショックだ。この時点では、景気に対しても相場に対しても、先行き警戒感が高まっていた。しかし、その後に株式相場は回復し、ライブドア・ショック前の高値を上回る。先行きに懐疑的な見方は抑え込まれてしまった。その結果、実は08年秋のリーマン・ショックに連なる株安の起点になった、07年8月の仏BNPパリバ傘下のファンド破綻(いわゆるパリバ・ショック)を軽視して、多くの投資家が傷を深める結果になった。

 つまり1カ月後か1年後かは分からないが「弱気の見通しが抑え込まれるまで相場は上がるのだろう」と、岩澤氏は予想する。そうした投資家心理の変化がマーケットの転換点を形成するというわけだ。

 市場心理と相場の関係は、岩澤氏が突然に言い始めたことではない。古くは堂島の米相場、現代では兜町の証券マンらの間で語り継がれる相場格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」という言葉がある。要するに岩澤氏と同じことを言っている。「もう下落する」「もうすぐ下げる」と、みんなが言っている間は往々にして「まだ下がらない」ものだという、市場心理の機微を言い当てた。逆に「まだまだ上がるだろう」とみんなが言ったときこそ、「もう下げる」というわけだ。米ウォール街の相場格言には「最後の弱気が強気に転じたら売り」というのもあるそうだ。

 したがって、市場の声が強気一辺倒になってきたら要注意だ。そこで経済紙誌に登場する市場関係者のコメントには注目したい。いつも弱気の見通しのコメンテーターが強気に転じたら、そろそろ警戒ということだ。さらに相場が上値を試す場面では「日経平均は3万円」「いや4万円だ」といった、やたらと景気のよい声が聞こえてくるかもしれない。すると弱気の声が引っ込み、株は上がり続けるというムードになるだろう。だが、それは投資家にとって、必ずしも朗報とは限らないというのが相場格言の教えるところだ。

(経済ジャーナリスト・山本 学)

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