エロ本は思春期の「宝探し」だった…ハチミツ二郎が絶滅危惧の時代に復刻版を創刊へ

 8月末でコンビニエンスストアの店頭から成人誌が消えた。スマホの無料動画などに押され、紙媒体としての“エロ本”が絶滅危惧種になろうとしている時代を象徴する出来事だった。そんな中、お笑い芸人のハチミツ二郎が思春期に接した成人誌にオマージュを捧げたムック本の創刊に9月から乗り出す。タイトルはずばり「エロ本」。責任編集を務めるハチミツに思いを聞いた。

 かつての青少年にとって、エロ本には「体験」が伴った。公園や河原などに捨てられた雑誌を拾って回し読んだ。自販機の前で人目を気にしながら100円玉を何枚か入れる時に感じる時間の長さとボタンを押す時の迷いと興奮、そして中身を確認して期待を裏切られた時の喪失感。親に見つからないように頭を悩ませた隠し場所…。そうした思春期における行動や記憶の集積がエロ本と結びついている。

 だが、時代は変わった。ハチミツは「エロに金を払ったことがないという世代が増えている。俺は1974年生まれで、中学生の時はビデオが1万6800円とかでしたが、今はDVDが1980円で買えるのに、それでも買わない」と現状を分析。「なんでこんなところに落ちてるんだという山の中でエロ本を見つけたり、遠くまで自転車に乗って山間の農家の横にあるような自販機で、人が来たら逃げたりしながら、みんなで小遣いを出し合って買ったエロ本が外れだったり…。そんな『宝探し』の体験が面白かった。今は、苦労しなくてもネット上には無修正のものがいくらでも落ちている。でも、そこから始めるんじゃなくて“教科書”から入っていこうと」と思いを語った。

 今回の経緯について、ハチミツは「知り合いから『何か本を作りませんか』という話があり、東京キララ社(出版社)と芳賀書店さんの協力も付けられるということを聞いた時に、『芳賀書店』というワードにひらめいたのがエロ本だった」と明かす。芳賀書店といえば、1980年頃のビニ本ブームで“メッカ”となった東京・神田神保町の書店。記者は当時の売り場での熱気を体感した者として、その発想に納得した。

 「モテない時にどうあがき、それを面白がれるか。『ネットの画像で何でも見られるから、彼女いらない』は違うだろうと。スマホの動画や画像でいきなり答だけ見て満足してしまうのではなく、外で玉砕することも必要。だから最終的には『家から出ろ』がメッセージです」。そのフレーズから連想される寺山修司の名著「書を捨てよ、町へ出よう」は、くしくも1967年の初版が芳賀書店から出版されていた。

 うっかり買った自販機のエロ本で、例えば、下積み時代の蛭子能収氏の漫画と初遭遇したり、学校や家庭では教えてくれない切り口のコラムが読めた時代。今回の企画は「カルチャーとしてのエロ本」を再現する。アイドルやセクシー女優らのグラビアのほか、芸人、アーティスト、ライターらによるコラムや対談を充実させるという。

 ハチミツは「テーマは『エロ』というよりも『思春期をどう過ごしたか』。悶々としていた少年がどうやって武道館までたどり着いたのかをアーティストに語っていただいたり。対談は豪華なラインアップになります。エロと関係ないページもあるデパート的な雑誌。若い人より40~50代に読まれる内容になるかもですけど、その世代の息子さんに手に取ってもらいたい」と構想を明かす。

100万円を目標としたクラウドファンディングで制作資金の一部に充てる予定。A5版の128ページ(うち半分がカラー)で、初版部数は5000部、価格は税別1500円を予定。ハチミツは「創刊後も第2弾へと続けていきたい。少子化対策にもつながれば」。あの“宝探し”をもう一度…。

(デイリースポーツ・北村 泰介)

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