「私が看取る!」と元保護犬を引き取った里親 宣告された余命を過ぎても幸せな日々

 愛するペットが余命宣告を受けたら…想像しただけで胸が苦しくなります。でも、大阪市住吉区に住む高木真美さんはあえて、そういう犬を家族に迎えました。ヨークシャーテリアとチワワのミックス、豆ちゃんは推定11歳の女の子。2017年10月に「余命1年半」と告げられましたが、2年がたとうとしている今も、高木さんご夫婦の愛情を一身に受けて、幸せに暮らしています。

 元保護犬の豆ちゃんは、住吉大社で放浪しているところを行政機関に保護されました。飼い主は見つからず、捨て犬や捨て猫の保護・譲渡活動を行う「LOVE&PEACE NOA」に引き取られたのが17年9月。避妊手術等の相談のため動物病院を訪れたNOAの阪上義昭さんは、「乳腺腫瘍の疑いあり」と聞かされ、心雑音もあったことから、手術の可否を判断する精密検査を受けるように言われました。そして、検査後に医師からこう切り出されたと言います。「手術はできるのですが、他にやっかいなものが見つかりまして…」。やっかいなものとは副腎の腫瘍。「大動脈に入り込んでいて、摘出しようとすると死んでしまいます」。それが医師の見立てでした。

 検査から1カ月後に行われた乳腺腫瘍の手術の際、医師は副腎の腫瘍に直接触れて確認したそうですが、診断は変わらず。「触ると心拍数が一気に上がる。かなり悪いもので、切除すればそのまま命を落とすでしょう」。豆ちゃんの小さなからだの中に“爆弾”があることを思い知らされた阪上さんは、同時に「余命1年半」というつらい宣告も受けました。

 高齢の上に長くは生きられない病気を抱えているとなると、里親さんはなかなか見つかりません。豆ちゃんを連れて譲渡会に参加しながらも、阪上さんの心の中には、半分あきらめの気持ちもあったのではないでしょうか。ところが!“救世主”が現れます。NOAで預かりボランティアをしていた高木さんです。

「前に飼っていたらぶという名前のビーグルが、15年7月に脳腫瘍で亡くなったんです。闘病は3週間だったんですけど、同じ時期に脳腫瘍と闘っているビーグルがNOAさんにいることが分かって。その子に会いに行ったのがきっかけでした」

 らぶちゃんを亡くして“ペットロス”になっていた高木さんは、次の子を迎える気持ちにはなれませんでしたが、NOAを応援したいと預かりボランティアを始めます。そして、ブログで見てずっと気になっていた豆ちゃんに譲渡会で会ったとき、「一目惚れ」したそうです。

「豆を見たとき、『私がこの子を看取ってあげないと!』と思ったんです。主人は、私がペットロスになっていたこともあって、『引き取るならもっと若い子を』と反対でしたけど。他に家族は見つからないだろうと思ったし、らぶは脳腫瘍と分かって3週間で逝ってしまったので、してあげたいことができなかった。その代わりではないけれど、豆には1年以上あるんだから、その間に楽しいことをいっぱいして、幸せな思い出を残してあげたいと思ったんです」(高木さん)

 18年2月3日にトライアルスタート。節分の日にちなんで、「福を呼んでくれますように」と豆ちゃんと名付けました。最初は反対していたご主人も、翌日には豆ちゃんの虜になっていたそうです。

 医師からは「お水をたくさん飲みだしたら要注意」と言われていますが、高木家の一員になって1年半以上、豆ちゃんに大きな問題は起きていません。それどころか「うちに来て何カ月かしたら元気になってきました」と高木さん。歯がほとんどないため、ごはんはドッグフードをミルミキサーで粉砕し、お湯をかけてやわらかくしたものをあげるのですが、最初は食べさせていたのが、途中から自分で食べるようになり、そうするとやっぱりおいしいのか、食欲も増してきたそうです。

「積極的な治療はしないと決めているので、豆のペースでのんびりと過ごさせてあげられればと思います。実は主人が、らぶが黒いワンコに生まれ変わった夢を見たらしいんです。不思議でしょう? 豆が来てくれて毎日が楽しいし、幸せです」(高木さん)

 高木さんご夫妻の“娘”になれた豆ちゃんも、きっと「幸せだよ」と言っているはずです。

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