田辺市の“ドンファン遺産”発表の裏にあった捜査の駆け引きとは 小川泰平氏が分析

 「紀州のドン・ファン」と称された資産家で昨年5月に急性覚醒剤中毒で死亡し、和歌山県警が不審死として捜査を続けている酒類販売会社の元社長、野崎幸助さん=当時(77)=の遺言に基づき、和歌山県田辺市が約13億円以上とみられる遺産の寄付を受ける方針を発表したが、昨年の不審死の直後から取材を続けている元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は22日、当サイトの取材に対し、そのことによって行き詰まっている警察の捜査に影響を及ぼす可能性を指摘した。

 野崎さんの死から1年4か月。自殺か、他殺か、事故死か、いずれも不明のまま、真相は依然として明らかになってない。そんな状況の中、田辺市は今月13日に会見し、野崎さんが全財産を田辺市に寄付する旨を記した遺言書に法的効力があるとして、市民全体の利益を考えて遺贈を受ける方針を固めたと発表した。

 会見では野崎氏の資産が少なくとも13億2000万円にのぼるとされ、同市は受け取り手続きにかかる弁護士費用など6540万円を計上した補正予算案を市議会に提出するなど手続きを進めている。一方、田辺市が遺贈を受けると相続額が0円となる野崎氏の親族らは今年8月に遺言書の無効を求める申立書を家裁に提出。また、遺言書が有効となっても、遺留分減殺請求をすれば2分の1の約6億5000万円を田辺市と分け合うことになる55歳年下の妻(23)の動向も注目されている。

 野崎さんの遺産を巡る“三つどもえ”の相関図に対し、小川氏は「今後、市と親族とで和解案が出てきたり、または、奥さんが遺留分減殺請求権によって得る2分の1の6億5000万円から、亡くなったご主人の兄弟とも今後うまくやって行くために、いくらかを分けるといった和解案が出てくる可能性も」と今後を占った。

 その一方で、同氏は「私の推測ですが、役所が単独で会見するとは思えません。事件の解明や判断の前に『殺人事件か、事故死か、そうではないか、まだ何も分かっていないこの時期にお金を受け取っていいものか』と批判されることは市側も考えていはずですから、事前に警察にも相談していたたと思われる」と指摘。さらに「警察側も捜査が進んでいれば『会見は待ってくれ』となっていたはずで、それがなかったということは、『何かお金の動きがあれば、実際に市が遺産を相続するという会見をすれば、何か動きが出てくるんじゃないか』といったようなことまで警察が考えていた可能性はある。それほど、警察の捜査は行き詰っているのでは」と推測した。

 捜査の進展について、小川氏は「例えば5千万円の保険金殺人とは金額的にもわけが違う。野崎さんの遺産は数十億円ともいわれ、これからお金の動きがあると思います。県警は今年に入っても7~8月に都内まで出張して捜査を進めています。ですから、決してあきらめているわけではない。実際に何か“あと一つ”ということを探っていると思います。愛知県での殺人放火事件の容疑者が先日逮捕されたが、事件自体は3年前の事件。警察は1~2年たったから諦めるということはないのです」と、長期化する中でも真相究明の動きは着々と進められていることを示唆した。

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