注目の若手俳優・伊藤健太郎の役者論 一つのカテゴリーに捕らわれたくない
日本テレビ系連続ドラマ『今日から俺は!!』で人気が拡大した、俳優の伊藤健太郎(22)。世代的には“若手イケメン俳優”に括られる人。しかしストレートなキラキラ系キャラクターより、童貞や弱っちい不良がやたらとハマる。新作映画『惡の華』(9月27日公開)では、玉城ティナ演じる仲村に尋常ならざる罵詈雑言を浴びせられながら恍惚に浸る、こじらせ系男子に挑戦している。
伊藤は「僕のことを“イケメン俳優”と思っている人がいたら、それは男としては非常にありがたい勘違いです。僕なんて一般人と何ら変わらないし、大したことないですから」と笑い飛ばす。そこには謙遜というか、特定のカテゴリーに縛られたくないという思いがある。
「役者の醍醐味は、色々な職業や人物になれるところ。それなのに同じ系統の役ばかりだと飽きられちゃうし、自分的にもやっていて面白くない。役者の仕事をしている以上、一つのカテゴリーに捕らわれたくない」と新規開拓が使命の仕事だと捉えている。
その言葉通り『悪の華』では、思春期をこじらせた文学少年役を新規開拓。玉城扮する仲村に「このクソムシがっ!」と罵られながら、破滅的変態道を突っ走る。放課後の教室で好きな女子のブルマの匂いを嗅ぐという衝撃的姿も披露。しかも撮影初日のシーンがそれだった。
「演技とはいえ、さすがに動揺した」と照れる伊藤だが「自分が経験していないことは想像でしか演じることができないので、実感を持って体現するのはもの凄く難しい。でも初めてブルマの匂いを嗅ぐシーンを撮ったときに、文字として脳みその中にあった『変態性』というものが、実感として体に伝わっていくのを感じた」とブルマに大感謝。
馬乗り状態の玉城から身ぐるみを剥がされる。制服の下に着ていたのは、盗んだ女子の体操着だった。まさに“笑撃”的場面。「してはいけないことをしているドキドキ感と女子の体操着を着ているというインモラル感に対する変なワクワク感。そこには玉城さんからの罵詈雑言を欲し、蹴り飛ばされたいと思う自分がいた。撮影期間中は役柄に引っ張られ、ドMの気持ちを理解していました」と身も心もどっぷり浸かった。
細部の積み重ねと工夫によって本来の自分にはない要素を作り出し、自分自身が役柄に飲み込まれていく感覚がたまらなく好きだ。「この役だったらどうやって逃げるのか、どうやって女子の体操着を隠すのか、どうやってカバンを持つのか。物語の本筋に関係ないような細かい設定を考える作業が面白い」とディテールを重視する。
毎作“神は細部に宿る”理論を実践中で「シーンごとに見たら何も影響を与えない、見逃してしまいそうな動きや表現かもしれないけれど、細部の積み重ねが結果的にキャラクターや作品全体の説得力に繋がる。観客に気づかれるか気づかれないかの微妙なラインで工夫するのが楽しい」と演技に対するマニアックなこだわりあり。“若手イケメン俳優”だけでは終わらない人だ。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)