幼児期に特定のスポーツをさせるデメリット2つ それより外遊びで楽しく体を鍛えて
スポーツの秋です。保育園や幼稚園、学校では運動会や体力テストがあり、その成績に一喜一憂したり、ラグビーW杯や来年の東京五輪を控えて「我が子にも何かスポーツを」と考える方も多いのではないでしょうか。
幼児期は、体の基礎を作る大切な時期です。そのため、幼児期に運動する機会を多く持つことは、体や心の発達においてとても大切なことです。私も理学療法士として色々なお子さんの運動指導を行ってきましたが、保護者の方から「体力をつけさせたいので、何かスポーツを習わせたいと思うのですが、どんなスポーツがいいでしょうか?」というご質問をいただくことがよくあります。
でも、そんなときに決まってお答えするのは、「幼児期の間は、特定のスポーツを習わせるよりも、外遊びの中で体作りを行うことをおすすめします」ということ。なぜなら、幼児期に特定のスポーツを行うことは、いくつかのデメリットがあること、そして外遊びには、幼児の体作りに欠かせない要素がたくさんあるからです。
デメリットその1「痛みや不調の原因を作る」
特定のスポーツばかりをしていると、体の同じ部位ばかりを使うことになり、その部分を酷使することになってしまいます。そしてそれが、痛みにつながる素地を作ってしまうリスクがあります。
デメリットその2「偏った運動学習経験になる」
スポーツで「技術の向上」を目指しすぎると、体の筋肉をバランスよく使う経験が少なくなります。「偏った運動学習経験」を強化させることになり、引いては体のアンバランスさ(左右非対称な姿勢や使いかた)を生む原因になってしまいます。
例えば、野球のピッチングでは、肘や肩の関節を酷使するため、痛みが出るなど不調の原因になってしまいがちですし、利き腕ばかりを使うため「左右均等に使う」「左右対称に体を使う」という機会が少なくなってしまうのです。
ですから、「幼児期はスポーツの基礎を育てる時期」と考え、できるだけ体を平均的に使わせ、バランスの良い体作りを行っていく必要があります。野球で言えば、幼児期にピッチングの練習をさせるのではなく、投球動作の基礎となる体幹筋を強化するような取り組みを行うことが大切です。コントロール良く投げるという活動は、小学校以降になってからでも遅くありませんむしろ、体の基礎を幼児期にしっかりと発達させておくことが出来ていると、コントロール良く投げるという活動も行いやすくなる=早く上達します。
■【幼児期の体作りは、スポーツではなく外遊びをしよう!】
それでは、幼児期に体の基礎を作るための取り組みとしては、どのようなものが良いのでしょうか。それは、「外遊び」です。
外遊びには、体の基礎や運動の基礎を作るための要素が沢山含まれています。例えば、「鬼ごっこ」では体幹筋を強化することができ、「だるまさんが転んだ」では筋肉が働くタイミングを学ぶことができます。また、「竹馬」では立位バランス能力を強化することができますし、「ジャングルジム」では、ボディイメージを養うことができます。
それに加え、子どもは「楽しく遊ぶ」ことができるため、「させられ感」を感じることなく、自然に体の使いかたを学び、知らないうちに筋力強化やバランス力アップを図っていくことができます。
しかも、これは「体の使い方が不器用」な、いわゆる「グレーゾーン」のお子さんの課題を解決するためにも非常に有効なのです。
子どもたちがスポーツをする姿は確かにかわいいし、カッコいいもの。でも、幼児期には、デメリットの多いスポーツをさせるよりも、「楽しく外遊びをし、体全体を使うことで『体づくり』をする」のが何より大切です。
日ごろ運動する機会のない大人にも、いい経験です。少し涼しくなってきましたし、天気のいい日には、ぜひお子さんと一緒に楽しく外遊びをしてみませんか? 子どもにとってもすごく楽しい思い出になるはずですよ!
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理学療法士として、神戸市総合療育センターで長年、肢体不自由児のリハビリを担当し、発達障害の子どもの支援や学習支援、講演活動も行っている株式会社ILLUMINATE(神戸市東灘区)代表取締役の西村猛さんが、子どもの発達全般や、グレーゾーン・発達障害の子への効果的な支援について解説します。
(理学療法士・西村 猛)