コンビニの食品ロス問題「もったいない」の狭間で
流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」。今回のテーマは「食品ロス問題」。いつでも欲しい商品が買える、裏返せば品切れNGという、コンビニエンスストアの“宿命”に切り込んだ。
コンビニ店員になった時、賞味期限切れの“弁当をゴミ袋に捨てる”や“紙パックの牛乳などをシンクに流す”といった行為が、勤務を始めて1週間程度で「もったいない」という意識が薄れ、お客さまのために正しい行為だと疑うことなく仕事をしていました。
コンビニでは、各店で毎日10~15キロ程度の売れ残り食品の廃棄が出ています。
セブンイレブンの鈴木敏文元会長による「機会ロス(品切れ)は顧客への裏切り」という考えが、コンビニ業界の思考スタンダードで疑う余地がなかったのです。
それを実行すると、どうしても廃棄が出てしまう。鮮度の良い持ち帰り食品を実現するために、機会ロスと廃棄ロスを両方ともなくすことは限りなく困難です。
そんな顧客のニーズに応えて進化してきたコンビニも、いよいよ社会的課題にも変化対応しなければならない時代となりました。
コンビニ各社は、廃棄間近の商品を買うとポイント還元をする施策を年末から本格スタートの予定です。
本部収益を悪化させる値引き販売も、ローソンを中心に食品ロス削減を優先し、推奨する方針へ舵を切りました。
ファミリーマートでは、うなぎ弁当や丸かぶり寿司などの催事商品を原則予約のみとし、食品ロスを削減する成果を出しています。
また、各社 商品の販売期限を伸ばす取り組みを進め、まさにコンビニ食品ロス撲滅元年といっても過言じゃない。
ローソンでは、廃棄食品を回収し、工場で家畜の飼料に加工し、畜産農家に提供される実証実験を都内3店舗で8月から2か月間実施しました。
配送車両での廃棄食品回収は、効率的ですが、現状では、廃棄物処理法でゴミを運ぶ車両が規制されているため特別な許可がいるのと、ゴミを出した自治体で基本処理をする自区内処理の原則があるのが現状です。環境省とリサイクルを推進する農水省が今回の実験を後押し、全国へと広がりを見せそうです。廃棄物がリサイクルで成仏(じょうぶつ)する時代にもなりそうです。
小さい頃 母親から買い物を頼まれると、「牛乳は日付の新しい後ろの商品買ってきてよ」と。いろんな取り組みが後押しする食品ロス問題、これを改めることが実は最大のポイントなのかもしれません。
◆渡辺広明 マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発700品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ「Live News a」のレギュラーコメンテーター。