ラグビーW杯決戦前にスコットランドの民族衣装「キルト」を試着…スース-しない重量感
台風19号の直撃が懸念される中、ラグビーW杯A組の日本対スコットランド戦が13日夜に横浜で開催される。日本代表が初の8強進出をかけた大一番を前に、スコットランドの男性サポーターが当日、スタジアムで着用するであろうスカートのような民族衣装「キルト」を試着。対戦相手を知るにはその文化を知ることである~というテーマでもって、その歴史や値段の相場と共に、キルトの着心地をレポートする。
キルトが記録に残っている最古の例は16世紀の終わり頃。18世紀には現在の形に近いスタイルが確立されている。NPО日本スコットランド協会の三村美智子理事は「スコットランドの北部であるハイランダーで発祥しました。格子柄のタータンで、家柄によって模様も違う」と説明した。
さっそく都内の同協会を訪ねて試着させていただいた。生地を手に取ると、3キロほどはあるだろうか。ずしりと重い。腰回りが1・3メートルほどのキルトを巻き、ひざが隠れるか隠れないかの丈に調節して、腰に装着されたベルトで固定。背後の部分が生地を折り込んだプリーツ(ひだ)になっているので、実際の生地はもっと長い。後は、風が吹いた時などにまくれないよう、生地の重なる部分の右下をキルトピンで止める。仕上げに「スポーラン」と呼ばれる革製のポーチを前方に巻いた。
三村さんは「昔は7メートルの1枚布で、肩から背負って、野宿する時には毛布のようにして、くるまって寝たのです。起きたら端をヒザに合わせてクルクル巻いて、お腹で締めればスカートのようになる。後にイングランド人がその長さを半分くらいにして今のような形になりました」と解説した。
ところで、値段の相場はいかほどだろうか。都内の英国雑貨専門店ブリティッシュ・ライフの公式ウェブサイトでスコットランド製男性用キルトの価格を確認すると、いずれも税抜きで、オーダーメイドが9万8000円、カジュアルが6万円。この違いについて、同店の代表・犬山貴雄さんに聞いた。
犬山さんは「(違いは)使用する生地の量です。カジュアルは半分の生地の量(約4ヤード)でキルトを仕上げます。短い生地でキルトを製作するため、カジュアルの方がプリーツの深さがとても浅くなります。現地でカジュアルと命名されたのは、正装以外にも着用して欲しい、また、もっと若年層の方にもキルトを履いて欲しいという思いで少しでも買いやすくするため安価に作る方法を編み出したのです。価格を抑えることにより、お金に余裕がない若い方々にも買って頂けると考案された近代的キルトです」と解説した。
購入層について、犬山さんは「ほぼ日本人で、スコットランドに興味がある方、バグパイプやスコティッシュダンスなどスコットランドの文化的なことを始められる方、スコットランド系の方と結婚される方、またそのような結婚式に出席する親族・知人などです」と明かした。さらに「ほとんどの若い方がキルトを持たない時代になってきています。キルトの話をする度に私は日本人として思うところがあるのですが、日本の着物もほとんどの方が持ってないですよね。キルトも同じようなものかと感じております」と付け加えた。
改めて、キルトの着心地を確かめた。生地がしっかりして、その中は温度が保たれ、パンツ等を履いていれば、スース-した感じはない。安定感がある。
ただ、自分の姿を鏡で見た時、まだ慣れない者としては“女装”をしている感覚がぬぐえず、不思議な気持ちにはなった。だが、そもそも「スカート(のようなもの)を履くのは女性だけ」という法律や規範があるわけでもない。生まれ育った文化圏の慣習に過ぎず、それが当たり前の共同体では何の違和感もない…ということを考える契機になった。
あとは台風による中止で引き分け扱いにならないことを祈るばかり。スコットランドと日本の激突をノーサイドの瞬間まで見届けたい。
(デイリースポーツ・北村 泰介)