保護猫活動のため一軒家を借り、月額40万円の支出!…資金繰り困窮の夫婦が思いついたアイデアとは
兵庫県宝塚市にあるNPO法人動物愛護・福祉協会「60家(ロワや)」は猫の殺処分ゼロを目指し、今年の5月に立ち上げられた。代表を務めるのは木村遼さん(34)、麻衣さん(35)夫婦。猫を愛する思いから何と一軒家を借り、シェルターにしてしまったが、家賃、餌代など毎月40万円の支出だという。そこで思いついたアイデアとは?
殺処分を減らすには不妊・去勢が一番の方法だが、当然のように手術代がかかる。一般的にオスで1万~1万5000円、メスで2万円。木村夫婦はいよいよ困って、今年の9月初旬、フェイスブックやインスタなどSNSを通じてSOSを発信するに至った。その時点で131万円の赤字。すると、6回に分け、何とのべ160人から計170万円の寄付が集まった。
「こんなにたくさん、応援してくれる方がいるのかと驚きました。叩く人はいなく、ありがたい気持ちでいっぱいでした。当然ですが、集まったお金はすべて猫のために使わせてもらってます。多頭飼い崩壊を減らすには不妊・去勢で蛇口の部分を閉めないと」
ロワやの基本的な活動は月1回、月末の日曜日に阪急「仁川駅」近くで保護猫の譲渡会&バザーを開催。譲渡数はシェルターをはじめてから43匹にのぼる。あとはホームページで譲渡会情報を流したり、SNSを使って日々の活動、保護猫の現況を報告など。ときには日本の動物に関する法律や考え方などの問題点、猫の飼い方など幅広く配信している。
「殺処分0にするには解決しなければならない根本的な問題があることを知りました。私たちも活動しながら様々な方から勉強させてもらい、成長しながらみなさんに伝えていきたいと思います」
また啓発のため、猫の缶バッジの販売の手伝いもしている。このバッジは譲渡会を開催している会員制の猫スペースのオーナーが商品化したもの。売り上げは微々たるものだそうだが、これも不妊・虚勢手術や病気猫の治療費、保護するのに必要な消耗品など全て活動費に回している。
現在、一軒家で保護しているのは30匹。なかには、不治の病を抱えていたり、猫エイズを罹っている猫もいる。人間と同じように動物にも個性があり、性格もそれぞれ。なかでも看板猫は黒猫のクロエだ。
「尼崎市の多頭飼育崩壊から保護したもので生後1年半の女の子です。エイズ・白血病は陰性でワクチンも接種済です。とても優しくて元気、猫も人も大好きですぐ打ち解けてくれます。気管を炎症していましたが、いまは良くなっています」
その他にも白黒のタマ。キジトラのシャーちゃん、三毛のミクなどが里親を求めてスタンバイしている。「怖がりだったり、猫が苦手だったり、ほんと性格は様々ですね」
好きで始めたと保護活動とはいえ、依然として今後は不透明。だが、途中で放棄することはできない。そんな中、木村夫妻が知人らに相談している過程で思いついた画期的なアイデアがある。
それは「遠隔里親制度」なるものだ。たとえるなら競走馬と1口馬主に近い関係。猫のオーナー兼サポーターになってもらい、預託料で運営するもの。猫が好きでも住宅事情や自身が高齢であることなどを理由に飼えない人は少なくないが、ロワやに行けばいつでも会うことができる。また、遠方や海外の人に向けては小型カメラを数台設置し、愛猫の日々の行動をインターネットで配信することも考えている。
「これがシステム化すれば、障害のある方の雇用にも貢献でき、猫好きの方にとっても愛猫の様子をいつでもみることができる。みんなが喜ぶことができるのではないでしょうか。もちろん、譲渡先が見つかるのもうれしいことです」
命の大切さを思うあまり、いまでは夫婦そろって肉を食べない生活を続ける。その取り組み方はどこまでも健気だ。
(まいどなニュース特約・山本 智行)