神戸いじめ教師 法廷で裁かれるのか、起訴猶予か…「行列」北村晴男弁護士に聞く
神戸市立東須磨小学校で起きた教員4人による同僚への暴行問題は、激辛カレーを無理やり食べさせるなど加害教師4人の異様な言動が際立っている。被害者の男性教員は兵庫県警に被害届けを出し、受理された。被害教員を休職にまで追いやった行為は今後、起訴されて法廷で裁かれる可能性はあるのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に今後の予想される展開を尋ねた。
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教師が教師を羽交い締めにし、激辛カレーを食べさせる映像はテレビで何度も放映され、YouTubeでも繰り返し再生されている。「ごめんなさい」と泣いて許しを請う被害教員。あざ笑う加害教師たち。男性教員は約50項目におよぶ被害を受けたと訴えている。
北村弁護士は加害教員の行為について、強要罪や傷害罪に問われる可能性がありうると指摘した。激辛カレーを食べさせたり目にこすりつけている映像において、加害教員が被害教員を羽交い締めにして動きを封じ、無理やり食べさせていることを問題視。「強要罪は暴行または脅迫を手段として義務のない行為をさせることをいう。本件では暴行によって義務のないことをさせているので強要罪に問われる可能性は高いと思います」と指摘した。食べさせることを強要した結果、被害教員の目や口が腫れるなどの負傷も負わせたとなると傷害罪にも問われることが考えられるという。
映像に残っていない被害もあると思われ、その場合は被害教員が主張する被害の客観的証拠がないことから、捜査当局の判断によっては加害教員4人の口裏合わせ(罪証隠滅)を防ぐために逮捕もありうる。
仮に強要罪、傷害罪で起訴されて有罪となればどのような刑が待っているのか。強要罪は刑法223条に定められ、3年以下の懲役に処すると定められている。傷害罪は同204条に定められ、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定められている。
他方、北村弁護士は起訴猶予となる可能性についても指摘した。一般に刑事事件では、加害者側の弁護士は被害者側と示談交渉することを考える。本件は社会的に大きな関心を呼んだものの、殺人や強盗致死傷といった重大かつ凶悪犯罪とは言いがたいことから、北村弁護士は「示談が成立すれば起訴猶予も十分にあり得ます」との見解を示した。
示談が成立するために必要なことは真摯(しんし)な謝罪と慰謝料。被害教員は新規採用で同校に赴任した2017年から宴席で嫌がらせを受けるなどの被害にあったと主張し、今年9月から休職した。その期間や、休職にまで追いやったダメージの深さを考え、加害者側が出せる金額、被害者側が納得する金額を模索して示談交渉をするという。
示談が成立し、起訴猶予となれば法廷で罪に問われることはなくなる。ただ、社会的影響の大きさを考慮して最低でも罰金は課そうとの判断で略式起訴となることは考えられるという。略式起訴とは公判を行わず、簡易裁判所が検察側が出した書面審理のみで財産刑を課す手続きのことを指す。
小学校の中で起こった教師による教師への陰惨な暴行。法的にどのように決着するのか、注目が集まる。
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北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。