大阪メトロの歴史を学ぶなら奈良にGO! なぜ隣県で“大阪の鉄道”の歩みを紹介してるの?
大阪メトロ(OsakaMetro/大阪市高速電気軌道株式会社)の開業から約1年。前身となる大阪市営交通局の歩みをたどる企画展「大阪市営交通114年の軌跡」が、大阪ではなく、お隣の奈良県にある「天理大学附属 天理参考館」(天理市守目堂町250)で開催されている。それにしても…大阪の鉄道に関する企画展が、なぜ奈良の博物館で開催されているのだろうか?
実は天理参考館は、国内外の旅や交通に関する資料を多数収集、専門の学芸員が在籍して整理・研究をしている。特に日本の鉄道開業期の貴重な乗車券などが揃っており、これまでも鉄道に関する数々の企画展が開催されてきた。
今回取り上げられた大阪メトロは、大都市の公営交通として初めて「完全民営化」されたが、皮肉なことにその歴史は「市営主義」を掲げて計画的な都市整備を推進した大阪市電気局(のちの大阪市営交通局)に始まる。企画展では、日本初の公営路面電車としてスタートした大阪市電の切符や絵葉書、路線案内図、鉄道部品などを展示。ほかにもHOゲージ等の模型による各種路線や、かつての町並みをジオラマで再現している。
市民の足としてだけではなく、大阪の街を形づくったといえる市営交通が与えた影響と意義についての紹介。大大阪と呼ばれた大阪の黄金時代を象徴する御堂筋線心斎橋駅の改修案が浮上する今、今後の大阪メトロのあり方を考えるきっかけにもなりそうだ。12月2日までの期間中には、専門家による講演会や市営地下鉄OBによるミニトークのほか、鉄道模型走行実演や記念硬券キップの配布など、さまざまなイベントが行われる。
ところで、天理参考館は、天理市の名前の由来にもなった「天理教」の海外布教を目的に、天理外国語学校(のちの天理大学)の「海外事情参考品室」として1930年創設された。「海外布教のためには、その土地で使われているものや考え方を知る必要がある」という方針のもと集められた膨大なコレクションは、世界の生活文化と考古美術資料をあわせて約30万点。1階から3階まである展示室には、アイヌをはじめ世界の先住民族の貴重な資料、縄文土器や中国の青銅器、エジプトのミイラの仮面、冒頭の交通資料など日本の資料も合わせて約3,000点が常設されている。
パプアニューギニアの森の中で実際に使われていた仮面群など、国立民族学博物館にも劣らないようなド迫力のコレクションもずらり、フラッシュを使わなければ撮影も自由、大人400円の入館料でたっぷり楽しめる。一般に公開されている学術機関なので、もちろん天理教への勧誘などは一切ない。
JR・近鉄天理駅から天理参考館までのレトロな商店街には、天理教関係のグッズや書籍を売るお店も多く、奈良町と雰囲気の異なるまち歩きを楽しめる。一足のばせば石上神宮や「山の辺の道」など古代史エリアもある。鉄成分が高めの人も、そうでない人も、今年は天理エリアでひと味違った文化の秋を満喫してみてはいかがだろうか。
▼イベント開催日など詳細は、天理参考館ホームページ https://www.sankokan.jp/
(まいどなニュース特約・鹿谷 亜希子)