自分でやってみた遺産相続…ゆうちょ銀行口座の相続は家系図を描くことから
昨年、父が1年半の入院生活の末に亡くなった。親が亡くなったら、避けて通れないのが遺産相続のめんどくさい手続き。我が家には“そこそこ”な預貯金しかなかったので、なるべく多く手元に残すために弁護士や司法書士あるいは行政書士などの専門家には頼らず、自分で手続きをやってみた。煩雑で面倒な手続きだろうと予想はしていたが、それ以上の煩雑さだった。おそらく今まさに同じ想いをしている人、あるいはこれから同じ想いをする人のために、自身の体験を書き残しておこうと思う。
最初に取りかかったのは、ゆうちょ銀行口座の相続手続き。これは最寄りの郵便局で手続きできる。用意するべき書類は、あらかじめネットで調べておいた。戸籍謄本、附票、実印、印鑑登録証明書、そして父の貯金通帳と届出印だ。それらを揃えて、郵便局の窓口に持参する。
「父が亡くなったので相続の手続きをしたいのですが」と告げると、職員はよく分かっていた。奥のキャビネットから「貯金等相続手続請求書(名義書換請求書兼支払い請求書)」という書類を出してきて「ひとまず、分かるところを記入してください」という。
A4サイズで1枚ものの書類だった。被相続人は父、代表相続人は筆者である。それぞれに氏名・住所・生年月日、そして父の死亡年月日、筆者との続柄として「長男」と記入する。遺言の有無を選択する欄には「無し」に丸を付けた。認知症が進行して、最晩年は自分の名前すら分からなくなっていたから、遺言どころではなかったのだ。書類の最後に筆者の実印を押して、貯金等相続手続請求書の記入はおしまい。
記入し終えたタイミングを見計らって、職員が書類をもう1枚出してきた。
「相続確認表(ご相続人さま関係図)」という書類で、ひらたくいうと家系図である。被相続人の欄に父の氏名・住所・生年月日・死亡年月日を記入し、その横に配偶者として母の名、相続の第1順位として子である筆者と3歳下の弟の氏名を記入する。この書類は、記入するだけでハンコは必要なかった。
用意してきた書類と、窓口で記入した書類に不備がないか点検してもらって提出する。本当はほかに、父が亡くなっていることが記載されている「除籍謄本」という書類が必要だったが、この前日に死亡届を提出したばかりで、役所の内部で事務処理が間に合っていなかった。そのため死亡届のコピーで代用した。要は「亡くなっていること」が証明できればいいのだという。
■すべての書類に、いちいち氏名、住所、捺印…
幸か不幸か、我が家には不動産も有価証券も宝石類もないので、手続きそのものは単純だった。しかし単純とはいえ、すべての書類にいちいち氏名と住所を記入し捺印する手間の多さには閉口した。郵便局の窓口で記入する「貯金等相続手続請求書(名義書換請求書兼支払い請求書)」と「相続確認表(ご相続人さま関係図)」、区役所では戸籍謄本と附票、そして印鑑登録証明書を取るとき、とにかくどんな書類にも氏名と住所とハンコは欠かせないのだった。とりわけ役所の縦割りというのだろうか、戸籍謄本と印鑑登録証明書はそれぞれに担当する窓口が異なるから、請求する書類もそれぞれに必要で手間が二度かかる。フォーマットを整理して1枚にまとめようと思えばできるはずなのだが、なぜしないのだろう。
さて、筆者が窓口へ提出した書類は、「大阪貯金業務センター相続課」へ送られて内容が精査されるそうだ。内容に不備がなければ10日後ぐらいに、口座の残高が代表相続人の口座に入金される流れになる。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)