「死なせてはならない」必死に生き延びた子猫、元気いっぱいのわんぱく坊主に
不妊手術を受けていなかった飼い猫が産んだ子猫。みんなひどい猫風邪をひいていた。譲渡先の星野さんが懸命に治療し、育てたら、猫風邪は完治。子猫は元気いっぱいになり、わんぱくっぷりを発揮した。
■不妊手術をしていない飼い猫が出産
東京都に住む星野さんの知り合いは、「家のガレージで飼い猫が8匹子猫を産んだので里親を探している」と言っていた。その話をご主人から聞いた時、星野さんは反対した。先住猫が血統書付きのマンチカンで、また猫を飼うならメインクーンかラグドールという猫種の子がいいと思っていたからだ。当時、保護猫がいることも知らなかったという。ご主人は、幼い頃から野良猫を拾って飼っていたので、「猫って、お金を出して買うものなの?」と不思議そうだった。
ご主人は、知り合いの家に子猫を見に行った。その家では、飼い猫の不妊手術をしておらず、猫は家の外と中を自由に出入りしていた。そのため、発情期になると妊娠、出産を繰り返していたようだ。生まれた子猫たちは、家には上げず、ガレージで母猫に面倒をみさせていた。よほど具合が悪ければ動物病院に連れて行ったようだったが、外で勝手に作ってきた子なので面倒はみないという方針だったそうだ。子猫たちは健康状態があまり良くなく、猫風邪にかかって、目やにがひどかった。
1匹の子猫がご主人のほうによちよち寄ってきたので、その子をもらうことにしたという。
■死なせてはならない
2014年5月27日、ハチワレの子猫は星野家にやってきて、とろろくんと名付けられた。
「とにかく汚れていて、猫風邪で片目はほぼ潰れ、鼻水で顔がガビガビでした。元気がなくてずっと寝ていました。小さくてやせていて、ごはんを食べるのもへたくそでした。そのわりには、段ボール箱をよじ登って、脱走しようとしたんですが。こんな小さな生きものを死なせてはならないと思いました」
上下のまぶたが癒着していたので、「もしかしたら片目は開かないかもしれない」と獣医師に言われた。病院で強制給餌の方法や目薬の処方をしてもらい、2週間くらいで見違えるように回復した。しっかりごはんを食べるようになり、顔の汚れも取れ、潰れそうだった眼もぱっちり開いた。家の中を元気いっぱいに走り回っていたという。
■わんぱくだけど、優しい猫
生まれた時から兄弟猫と一緒に暮らしていたので、社会性は身についていた。先住猫のねりごまちゃんと対面すると、「遊ぼう」と言ったが、ねりごまちゃんは6年間1匹で暮らしていたので、自分以外の猫に驚いてシャーっと一喝した。とろろくんは、すぐに空気を読んで、ねりごまちゃんには近寄らなくなったという。
「まだ子猫なのに、猫社会のルールを学んでいるんだなあと思いました」
とろろくんとねりごまちゃんが同じ部屋で過ごせるようになるには、半年くらいかかった。
「家族が心配し過ぎたあまり、猫にもそれが伝わってしまったように思います。とろろがねりごまに突進すると、ダメダメー!と大声をあげてしまったのですが、余計に興奮させるだけでした。猫には猫のルールがあるので、必要以上に心配したり、大声をあげたりするのは逆効果ですね。今では反省しています」
おっとりしたねりごまちゃんとは違い、とろろくんはわんぱくだった。ケージの外側からよじ登ったり、タンスの上から飛び降りたり、キッチンカウンターの上に飛び乗ったり。最初、星野さんは、驚くことがいっぱいあった。
しかし、とろろくんは、自分より小さい猫にはとても優しく面倒見がいい。後から来た猫と一緒に寝て上げたり、毛づくろいをしてあげたり、おもちゃを譲ってあげたりする。
家族の中では息子さんのことが一番好きで、いつも一緒に寝ている。息子さんがなでた時だけ、ゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らす。