山崎まさよしがダークヒーローに 横山秀夫原作の映画「影踏み」篠原哲雄監督に聞く
横山秀夫原作「影踏み」が、俳優としても活躍するミュージシャンの山崎まさよし主演で映画化された。監督は篠原哲雄。この主演と監督の組み合わせは、公開から20年以上経った今も根強い人気を誇る「月とキャベツ」(1996)の黄金コンビだ。11月15日の全国公開(群馬県は11月8日から先行公開)を前に、「山ちゃん、あの頃より演技が上手くなってるよ」と笑う篠原監督に話を聞いた。
「影踏み」は凄腕の窃盗犯として生きる男(真壁修一)が主人公という異色の犯罪ミステリ。原作には小説ならではの“仕掛け”があるため、軒並み映画やドラマになっている横山作品の中で、珍しく映像化が見送られてきた一作だ。なぜこのタイミングで、しかも「月とキャベツ」のコンビで撮ることになったのだろう。
「『月とキャベツ』のロケ地は群馬県の中之条町という所なんですが、この町の廃校を改装した伊参(いさま)スタジオでは毎年『伊参スタジオ映画祭』という手作りの映画祭が開かれていて、毎回僕の長編デビュー作『月とキャベツ』を上映してくれているんです」と篠原監督は言う。
「『月とキャベツ』公開20周年に当たる2016年には、山ちゃん(山崎まさよし)が記念のミニコンサートを開きました。同映画祭が主催するシナリオコンクールで審査員をしていた横山さん(群馬県の上毛新聞の元記者)もその場にゲストとして招かれていて、控え室で2人が意気投合しました。横山秀夫原作の映画を山崎まさよし主演で、という話はそこからの自然な流れ。それで、山ちゃんとも伊参とも縁が深い僕に監督の依頼が回ってきた、というわけです」
ちなみに、すでに何度も名前が挙がっている「月とキャベツ」とは、山崎の俳優としての初主演映画。山崎の代表曲「One more time, One more chance」誕生の瞬間が、幻想的なラブストーリー仕立てで描かれており、山崎のファンや群馬関係者などを中心に、今も多くの人に愛されている伝説的な作品である。
山崎の起用について、篠原監督は「山ちゃんは一見素朴でありながら、ミュージシャンとしてのオーラも十分。そしてトークが上手い(笑)。お客を惹きつける力が当時からすごかったので、俳優もできそうだなと直感したんです」と振り返る。
「今回は泥棒役。彼の謎めいた部分に合うと思いましたし、修一のどこか職人的な佇まいが、山ちゃんのアーティスト性とも共通するように感じました。何より、『山崎まさよしが泥棒役』って面白いじゃないですか」
脇を固めるキャストも、尾野真千子や北村匠海、滝藤賢一、大竹しのぶら人気と実力を兼ね備えた俳優たちが名を連ねた。「月とキャベツ」組からは田中要次、鶴見辰吾、そしてヒロインを務めた真田麻垂美らが出演。ファンには嬉しい粋な計らいが、随所でさりげなく光る。
本作も、伊参スタジオを拠点に群馬県内でオールロケを敢行。地元でも歓迎ムードが広がっており、同映画祭での先行上映会(11月8日)はチケットが即完売したという。その他、群馬県内では計6館での上映を予定。篠原監督は「正直、(群馬への)期待はかなりあります。先日、山本一太・群馬県知事も表敬訪問したんですけど、ものすごく応援してくれている。後押しになれば嬉しいですね」
…最後に脱線するが、篠原監督は1993年の神戸国際インディペンデント映画祭でグランプリを受賞(「草の上の仕事」)しており、「神戸には強い縁を感じている」という。2014年には兵庫県の淡路島で栗山千明主演の「種まく旅人 くにうみの郷」を撮影。さらに阪神タイガースのファンで、阪神競馬場も大好きとのこと。これはもう実質関西人であると言っても差し支えないのではないでしょうか。
「いつかまた神戸で映画を撮りたいと思っていますので、よろしくお願いします」
お待ちしております!
■「影踏み」公式サイト https://kagefumi-movie.jp/
(まいどなニュース・黒川 裕生)