「RUN伴」を知っていますか 認知症の人とともにタスキをつなぎ、地域・社会とつながる列島リレー

夏から秋にかけて、オレンジ色のTシャツをきた人たちが、街の中をタスキをかけて走っているのを見かけたことはありませんか?「RUN伴(ランとも)」というイベントが、日本中で開催されています。私は今年、RUN伴兵庫に参加し、とても楽しく良い機会となったので、まだ知らない方には是非、知っていただきたいと思います。

RUN伴はNPO法人認知症フレンドシップクラブが事務局となり、都道府県や市町の住民が地域ごとに開催している、認知症啓発のイベントです。最大の特徴は「RUN」、つまり走ることです。認知症の人もそうでない人も、一緒に走り、応援し、その為の準備をして達成感を共にすることで、認知症の人へのマイナスイメージではなく、地域で伴に暮らす社会の大切な存在であることを認識できます。

RUN伴は年々規模が大きくなり、今では北海道から沖縄まで各地で開催されています。公式Webサイト(https://runtomo.org/)によると、2019年RUN伴では18840人のランナータスキをつないで、35都道府県の494市町村を通過したそうです。兵庫県では、700名を超えるランナーが11月3日の県内ゴールに向けて、数日に分けてタスキをかけて走りました。

私は準備から参加していましたが、広い兵庫県内各地から有志が準備や打ち合わせのために集まると圧巻です。仕事終わりに遠くからくると、ミーティングが終わりごろにやっと到着することもありました。到着時には、拍手で迎え、ゴール!!!また、走るためのコース設定、啓発のための企画、応援グッズの作成など、地域の方や施設の利用者さん、医療や福祉の専門職、多くの地元企業の皆さんにたくさん手伝ってもらいながら、半年以上にわたる準備が進められました。中には背負える大きなオレンジ色のでんでんむしのマスコットを作ってくださった方もいらっしゃいました。姫路のコースでは先導自転車に乗っている人が背負って一緒にお城を目指しました。

兵庫県は、参加市町ごとにスタートと中継、ゴールを行いました。初参加の淡路島では、走るだけではなく、歩いたり、自転車移動のコースも設定されていました。開催日の11月2日は快晴だったので、リゾート気分も味わえる素敵なRUN伴になりました。また、神戸・阪神エリアでは、走ったあとはみんなで「ボッチャ」を行っていました。ボッチャは障害者も一緒にできる新しいスポーツで、パラリンピックの公式種目にもなっています。走って、応援した後、さらにスポーツをみんなでする元気さにびっくりです。

ゴール地となった姫路では、午前中は地域の高齢者施設等の協力を得てスタート、12.5kmと3kmの2コースに分かれ、西と東から姫路城を目指し、ランナーはタスキを渡しながら駆け抜けました。施設に立ち寄ると、利用者さんが出て来られ手を振って、送り出してくださいました。同じ頃、姫路城周辺では走っていない参加者が、ティッシュ配布の啓発活動や認知症サポーター養成講座を開催し、地域の方にも認知症について正しく知っていただく機会づくりを行いました。最後はランナーと県内各地から集まった参加者と一緒にノボリや横断幕をもって商店街を練り歩き、世界遺産姫路城へ。100名近くが姫路城を望む公園に集まりました。

『RUN伴って、なに?』『認知症の人と一緒に何かしたら、どうなるの?』という質問は、RUN伴を一緒にしようと誘い掛けたときに必ず聞かれる質問です。参加する中で、高齢者、認知症のある方、身体が動きにくくなった方、いろんな方と出会います。一緒に応援用の小旗を作ったり、旗を振って応援したり、拍手をし、歓声を上げ、長距離を走れなくても一緒に少し歩いてみたり、車椅子を押したり、押されたり。このように、楽しみながらかかわっているみんなが目指すのは、同じゴールです。認知症があるからと言って、何か特別なことはありません。

日本では高齢化が進むにつれ認知症の人が増加し、2025年には700万人になると予想されています。毎年9月は認知症啓発月間で、中でも9月21日は世界アルツハイマーデーとして日本各地で歴史的建造物やモニュメントなどのオレンジライトアップや、講演会などが開催されています。9月だけでなく年間を通じて、地域ごとにさまざまな認知症についての勉強会や認知症カフェなど支援の輪を広げる活動が拡げられています。

私は今年は「走るのは苦手!」ということで、準備や応援を行いましたが、気持ちよさそうに走り、タスキをつなぎ、嬉しそうにゴールをする様子をみていると、少し歩くぐらいならコースにでてみようかと思いました。来年、同じ思いで一歩を踏み出す人に認知症があってもなくても、一緒に手を取って参加できると楽しいでしょう。その繋がりは、社会との繋がりです。私たちは暮らしの中で繋がり、見えないタスキを次々と受け渡し、またそれを見守り応援することで、役割や居場所を確認し、お互いのかけがえのなさを実感できるのだと思います。

認知症になってもならなくても、何歳になっても、安心して暮らせる地域社会の実現に向けて、繋がっていきましょう。

(社会福祉士・森保 純子)

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