スター選手はいじめを防止する力を持っている 米国高校で立証した3つのケース
NFLのQBスティーブ・ヤングやボクサーのオスカー・デ・ラ・ホーヤら300人以上のアスリートの代理人を務めてきたリー・スタインバーグ氏は、カリフォルニア州の高校運動部統括組織で講演を行い、いじめ防止について語った。高校レベルでも、校内のスター選手たちは学校の文化を変える力があると主張。運動部員が、いじめられている生徒や身体的なハンディのある生徒といっしょに昼食を取ったり、ともに過ごしたりすることで「いじめは受け入れられない」というメッセージを他の生徒に向けて発信できると説いた。同氏は、2016年のフォーブス電子版でも、高校の運動部員やコーチはいじめ防止に大きな影響を与えられると訴えている。
<ケース1>今年9月、米国テネシー州の高校に入学した男子新入生が、毎日、同じ服を来て登校しているという理由で、新学期が始まってから3週間以上、いじめられていた。この生徒の保護者はどんどん成長する子どもの体にあう洋服を買ってやることができなかった。それを見かけた2人のアメリカンフットボール部員の男子生徒が、新しい靴や、傷んでいない洋服をプレゼント。廊下で2人が袋につめた衣類を渡している動画がSNSで拡散されたところから話題になった。
<ケース2>2014年には、ニューメキシコ州の高校アメリカンフットボール部員の男子生徒が、同じ敷地内の小学校でいじめられていたキンダーガーテン(小1の1学年下で日本の幼稚園年長)の男児と一緒に昼食を食べることにした。小さい子どもたちにとって、高校のアメリカンフットボール部の選手は憧れの存在。いじめられていた子どもを勇気づけることができる。いじめていた子も「いじめのターゲットにしていた子が憧れのアメフト部の選手と昼食を食べているところ」を目にすることで、力関係に変化が起きた。いじめられていた男児は、喜んで学校に通えるようになった。他のアメリカンフットボール部員も輪に加わった。いじめられている子と昼ごはんを食べたり、いっしょに遊ぶクラブを結成するまでになった。
<ケース3>マサチューセッツ州の高校バスケットボール部で活躍する男子生徒は自分が同性愛者であることを公表し、自校と他校のあわせて100人以上の運動部員から、同性愛者をいじめない、差別的な発言をしないという誓約を集めた。このバスケットボール部員は、練習中のジョークで同性愛者をからかう発言を聞くのがいやで、自分がゲイであることをずっと隠してきた。しかし、大学の同性愛者の運動部員が、差別やステレオタイプと戦っていることを知り、高校でも同じことをやらなければならないと思ったそうだ。
米国内でも運動部内のいじめはあるし、運動部員が他の生徒をいじめることもある。しかし、前述した3つのケースは、校内スター選手たちが、それぞれに与えられた力を発揮したといえるのではないだろうか。
(まいどなニュース特約・谷口 輝世子)