認知度イマイチでも外国人には大人気 「上方浮世絵館」が大阪の観光スポットになっていた

 インバウンド客で賑わう大阪・道頓堀のすぐ近く、法善寺の門前にある「上方浮世絵館」が密かに注目を集めている。江戸末期の中村歌右衛門ら当代人気の歌舞伎役者をありのままに描いた作品を常設展示している全国でも珍しい私設の美術館。海外では「Osaka Prints」として人気だそうで、関西人としても一度ぐらいのぞいて損はない!?

 同館は2001年4月にオープンした。館長の高野征子さんはかつてギャラリーを営み、やがて上方浮世絵に魅了され、収集。4階建ての美術館を構えた。

 「上方浮世絵は近松の心中ものとか、色ものを題材にした優しい感じ。そのほとんどが役者絵で太っていたら太ったまんま。上方らしいリアリティーさが特徴です。そんな浮世絵を、江戸時代末期に千両役者やタニマチがそぞろ歩きしていたここ法善寺門前で観てもらえればと思いました」

 上方浮世絵は江戸後半の文化文政から明治20年ごろにかけての100年間に京都、大坂(上方)で制作されたものをさす。江戸浮世絵のように美人画、風景画はほとんどなく、同じ役者絵でも華美な江戸に比べ、写実的で素朴な線描が特徴とされる。

 海外でも「Osaka Prints」として評価は高く、大英博物館やカリフォルニア博物館、ベルギー王立美術館などが多数所蔵。印象派の巨匠ゴッホも数点所有していたとか。そんな背景もあり、ここ上方浮世絵館は「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で紹介されたり、外国人旅行者向けのお勧めサイトのトップになっていることから外国人観光客がひっきりなしに訪れている。

 取材した日もアメリカ人のカップルが訪問。「ユーはなぜ、ここへ?」と尋ねると「サイトで見つけてやって来ました。浮世絵は日本独自の文化を感じられ、ヒューマニティーにあふれている」と興味深そうに魅入っていた。

 建物の1階は受付があり、浮世絵グッズと和風小物を販売。2、3階が展示室(五輝亭貞広の「ひらかな盛衰記」、春好斎北洲の「けいせい花大樹」など30点)になっており、3カ月に1回入れ替え。4階は和室になっており、浮世絵摺(す)り体験ができると好評だ。

 またテーマごとに年4回の企画展を実施しており、現在は「浮世絵のいろいろ~きいろ編」(12月1日まで)を開催。「木版によって制作される浮世絵は色ごとに版がつくられます。今回は絵に使われる黄色の効果や役割を探ろうと、それに合わせた絵を展示しています」と言う。

 淡路島出身の高野館長は幼いころから芝居好き。「祖母と一緒に文楽や浄瑠璃を観に行って、義太夫が語る喜怒哀楽が印象に残っていた。五右衛門風呂を聞いて育ったようなもの。それと小6のとき、モミジの絵を描き、それを校長室に飾ってもらい、絵が好きになったんですよ」

 いまも賑やかな道頓堀は昭和初期まで「道頓堀五座」(浪花座、中座、角座、朝日座、弁天座)が並ぶ娯楽の街だった。「言わばブロードウェイのようなところ。スターの役者がこの界隈をそぞろ歩きしたり、船乗り込みをしたり。上方浮世絵に描かれた役者が生き生きとしていたこの場所で、これからも日本独自の美を伝えていきたい」

 来館者の8割は訪日外国人。関西人が思っている以上の人気スポットのようだ。独占させるのはもったいない。

(まいどなニュース・山本 智行)

▼上方浮世絵館 大阪市中央区難波1-6-4  電話06(6211)0303 月曜・祝日休館。入館料は大人500円、小中学生300円。

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