阪急電車に東京メトロ…「コラボ」続々のクーピーに“幻”の大阪メトロ版も ヒットの理由を聞いた

 子どもの頃、きっと誰もがお世話になっただろうクーピーペンシル。そのクーピーと企業とのコラボ商品が次々と登場し、話題を集めています。色の名前をオリジナルのものに変えてみたり、色の組み合わせをアレンジしてみたり。ついには“巨費”を投じて新色を作り出したものも…。なぜ、いまコラボが広がっているのか、取材しました。

 台風19号が過ぎた直後、東京メトロへのエールを込めて東京メトロのクーピーの写真がツイッターに投稿されるや否や、大きな話題に。そのクーピーは「ぎんざせん」「まるのうちせん」「ひびやせん」…「ふくとしんせん」と各線のカラーが開業順に並べられ、千代田線と東西線は車体の塗装に合わせて水色と青色、黄緑色と緑色の2色を使い、最後に「とんねる」色(ダークグレー)まで加えられるという細かなアレンジ。拡散が続き、「かわいい」「『とんねる』がじわじわ来る」と反響が集まりました。

 サクラクレパス(本社・大阪市)によると、こうしたコラボ商品はかなり前から販促商品として制作してきたそうですが、ターニングポイントになったのが、2017年10月に阪急電鉄とコラボしたクーピー。通常は既存の色を使ってきましたが、阪急の場合はその象徴である車体の「マルーンいろ」とピッタリ一致する色がなかったため、新たに制作することに。見た目ではなく「紙に塗ったとき」にその色が出るようにと既存の「ぶどういろ」をもとに顔料の配合を何度も調整し、3~4回の試作を経て完成させたとか。制作費はすべて阪急側が負担したといい、阪急マルーンへのゆるぎない自負と誇りを感じさせます。

 その甲斐もあり、限定2千箱で制作した商品はわずか5日間で完売。2018年1月に6千箱を再販売しましたが、それも完売したためオリジナルグッズとして定番化し、現在は阪急・阪神の駅の売店「アズナス」などで販売しています(全12色、税抜き917円)。さらに、ファン垂涎のレアものが、2018年6月に阪急仁川駅最寄りの阪神競馬場で行われるG1の宝塚記念に合わせて作られた限定バージョン。家族向けイベントのノベルティとして抽選で配られたといい、パッケージの電車の行き先表示板が「普通」「仁川」になり、芝生の黄緑なども追加されているこだわりようです。

 ヒットについて「クーピーのパッケージデザインは一貫して1973年の発売当初のまま。だからこそ、懐かしさと、それが少しアレンジされた面白さを感じて頂けたのでは」とサクラクレパスの担当者。阪急電鉄広報部も「当初は子どもさんに楽しんでもらえたらと思ったのですが、他にないマルーン色という『特別感』が相まって『大人ゴコロ』をくすぐったのかもしれません。まさかこれほどの反響になるとは驚きでした」と話します。

 その後、サクラクレパスには企業などからの問い合わせが次々に寄せられ、今年4月には中日ドラゴンズとコラボした「ドラゴンズクーピー」が登場。球団マスコットのドアラの塗り絵とセットで、ドアラの体とチームカラーの青には「ドアラの毛の色」、赤には「ドアラのリストバンドの色」、黄色には「ファールポールの色」などとオリジナルのネーミングと刻印が。続いて10月に登場したのが、今話題の東京メトロのクーピーだったそうです。

 関西人としては、東京メトロがあるなら、大阪メトロも作って欲しいところ…。というわけで制作予定はないのか尋ねてみると、実は、非売品ですが、もう既に大阪メトロ版はあるのだとか!

 大阪メトロに確認すると、その正体は、2018年4月1日の開業セレモニーに合わせて配られた記念品で8色のミニサイズ版。色は当然、東京メトロと同じく路線のカラー…かと思いきや、ニュートラム(南港ポートタウン線)に投入された新型の200系の車体に使われている8色なのだとか。大阪メトロの「顔」ともいえる御堂筋線は…というと、箱の側面に、新型30000系の1、2両目と9、10両目の側面が、ちゃーんと描かれていました。

 ちなみにこの幻の大阪メトロ版は5000個限定で制作。開業イベントの後も同社が開く子ども向けイベントなどで配っており、まだ若干の在庫もあるとか。ただ、商品化の予定は「いまのところありません」(大阪メトロ)だそうです。

 ちなみに、サクラクレパスといえば、今や代名詞でもあるクレパスの絵柄を使ったライセンス商品が次々と登場。JR西日本のキオスクでも人気の土産物といい、企業からの問い合わせも急増しているといいます。「パッケージ自体が知財なのでデザインの変更が原則できないなど難しい面もありますが、多くの方に親しみを持って頂けていることが嬉しく、採用面でも『文房具にとどまらずいろんな展開ができる』と可能性を感じて志望してくれる学生が出てきました」(橋本章男・大阪特販課担当部長)と声を弾ませます。

 変わらぬ「本質」と、それをアレンジし、新しいものを作り出していくしなやかさ。それこそが来年で創業100周年を迎える老舗の力なのかもしれません。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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