中学生が小学生を切りつけた事件の異質性 影響受けたゲームやサイト検証で原因究明を
青森県八戸市で12日に下校中だった小学6年の女子児童が刃物のようなもので首を切りつけられる事件が発生し、14歳の男子中学生が殺人未遂の疑いで逮捕された。教育家の水谷修氏はこの事件について、これまでの少年犯罪にはない異質性を指摘した。
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青森県八戸市で、小学校高学年の女子児童が、首を切られ重傷を負った事件で、14歳の中学生の少年が逮捕されました。報道によれば、この少年は、「人を殺すことに興味があった。だれでもよかった」と話しているそうです。
この少年は、14歳ですから、検察への逆送致、つまり成人と同じように裁判所で裁かれ、刑務所に送られることはありません。少年法の下で、警察署での取り調べを受け、その後、鑑別所に送られ、そこで、家庭裁判所調査官による、生育歴や生育環境、また学校での状況などの調査、そして専門家による精神鑑定が行われ、そして、その結果に基づき家庭裁判所での審判を受け、法務省傘下の少年院や医療少年院、厚生労働省傘下の「むさしの学園」への送致などの処遇が決定されます。特に、今回の場合は、特殊な事件ですから、精神鑑定については、そうとう深く丁寧に行われることでしょう。
私には、今回の事件で気になることがあります。それは、この事件の異質性です。虐められ、その相手に対して復讐のために起きた少年による事件、虐待され、その結果親に対して起きた少年事件は、今までにもありました。それらの事件では、加害者と被害者に一定の関係が存在しました。しかし、今回の事件は、まったく違います。1997年に起きた、「神戸市連続児童殺傷事件」を思い出したのは、私だけではないはずです。あの時の犯人もまさに14歳でした。しかも、殺人に至った動機は、通常、理解しがたい不可解なものでした。
私から、八戸市の教育委員会、この少年の小学校、中学校関係者、児童相談所、家庭裁判所の方々にお願いがあります。ぜひ、この事件を、特別な少年が、たまたま起こしてしまった特殊な事件として扱い、少年法に従って、淡々と処置するのではなく、ぜひ、家庭裁判所の調査官だけでなく、教育委員会の中にも、児童相談所の中にも、調査、検証チームを作り、互いに協力し合いながら、また、医師、臨床心理士などの専門家の力を借りて、この事件のきちんとした背景、原因をつきとめて欲しいのです。そして、それを、きちんとまとめて公開して欲しいのです。
いかに子どもであっても、背景や原因もなく人を殺そうとする人はいません。必ず、その家庭や生育歴、小学校、中学校での状況の中に、また、現在は、子どもたちは、ゲームやネットから多くの影響を受けています。彼が、やっていたゲームや彼が見ていたネットのサイト、読んでいた本や漫画、その中に、その原因や背景が潜んでいます。それが明らかになれば、このような犯罪を防ぐ方法を見いだすことができます。
このような哀しい事件の再発を防ぐためにも、ぜひ検討していただきたいと考えています。