男性化粧品の伸びしろに期待 変わるメンズの美容意識 渡辺広明氏が解説
流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」。今回のテーマは「男性化粧品」。時代の移り変わりと共に進化してきた男性の美容意識を背景に、メンズ化粧品市場の現状を解説した。
◇ ◇ ◇
この秋、男性用のメーク化粧品のTVCMが初めてOAされました。男性の美容意識がそこまで来たかあという感じです。
「uno フェイスカラークリエーター」、いわゆるBBクリームです。男性の読者はピンっと来ないかもですが、簡単に言うと、肌悩みをカバーする商品で、クマ、シミ、肌の赤味、毛穴、男性であればヒゲの青みを隠せて日焼け止め代りとしても使える商品です。
若者だけに売れると思っていた商品は30代、40代にも売れ、3月からの先行販売では計画比3倍も売れ、今回のTVCMにつながったようです。
1990年代終わり頃から男性の美容意識がチラホラと顕在化し、リップクリームやフェイシャルペーパーを持ち歩くようになり始め、洗顔フォームを使う習慣が当たり前化していきました。その頃の若者がミドルになり始めで、シミを気にし出すタイミングも合致していたのがヒットの秘密でしょう。
忘れもしない、コンビニの化粧品バイヤーだった当時、マンダムの営業マンから「GATSBYフェイシャルペーパー」の案内があり、「これはウエットティッシュだから、化粧品担当の僕の商品ではないよ」と言ってしまったのは笑えない笑い話です。
サッカー選手が髪を染めるのがカッコいいと、若者がGATSBYのヘアカラーに殺到したのもこの頃です。
近頃では、男性用制汗ボディシートを全男性の3分の1が使い、ファミリーマートではエステのTBCと限定商品を発売し、発売1年半で累計70万個発売。シリーズのフェイシャルペーパーは、年末に100万個の売上を達成する見込みです。
ローソンでは、この秋にユニリーバAXEから男性用フレングランスハンドクリームを発売し、香りへのアプローチで新市場の掘り起こしを狙います。
通販大手のオルビスはスキンケアの巨大市場に向けて「Mr.シリーズ」を発売し、Amazonカテゴリーランキング1位を受賞しているなど市場活性状況です。
人口減少でマーケットシュリンクする中、男性化粧品は、未使用者にアプローチ促進することで各メーカーは伸び代に期待し、売上アップを狙っています。
こうなると男性が口紅をつけ始めるのも近い未来なのかもしれません。
◆渡辺広明 マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発700品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ「Live News a」のレギュラーコメンテーター。