「5G」が引っ張る株式相場 通信の用途拡大、機器市場が膨らむ期待
半導体試験装置のアドバンテスト(証券コード6857)が12年ぶりの高値水準で推移しているのが象徴しているように、半導体関連銘柄が好調だ。特に2020年にも本格的な普及が始まるとみられている次世代通信網「5G」に関係する製品などに、4~9月の決算発表では「受注が増えてきた」というメーカー各社の声も伝えられるようになった。上場企業全体でみれば2期連続の減益でも、銘柄選別の際に残るものの候補に「5G」が意識されている。
「5G」のGはGeneration(世代)の頭文字。つまり日本語で正式には、第5世代移動通信システムという。2015年9月に国際電気通信連合が5Gの性能について要件をまとめた。それから4年が経過して、国内ではNTTドコモ(9437)が今年のラグビー・ワールドカップに合わせて先行サービスを開始し、KDDI(9432)など他社も2020年には本格サービスを開始する予定だ。5Gになると期待されるのは、「通信」の用途が一気に変わることだという。
5Gの主な特徴は、高速大容量、低遅延、同時に多数が接続できるようになることなど。リアルタイムで多くの情報をやりとりし、判断したり制御したりという仕掛けに、これまで以上に使いやすくなる。典型例は自動運転、遠隔医療、それにいわゆるIoT(センサーや道具をネット接続して常時監視や常時情報収集すること)だ。手元の携帯電話・スマートフォン(スマホ)ではない道具やセンサーが、5Gの通信網を利用する。これが従来の電話機の台数どころでなく、膨大な数になる可能性が高い。
したがって5G対応のスマホが売れるかどうかに関わらず、5Gに対応した通信機器の市場が一気に膨らむとの期待が、足元の半導体株高だと考えてよいだろう。実際、5G関連の受注が増えているとの声が2019年4~9月期決算発表の記者会見の席上でも出ていた。NEC(6701)の新野隆社長は5Gを見据えた固定ネットワークの案件が伸び、関連のITサービスも増加した」と話したと伝わった。通信網整備やシステム更新の需要を捉えたようだ。
5G関連銘柄の本命とも呼ばれているのは、通信計測機器大手のアンリツ(6754)だ。携帯端末などが規格に通りに、正常にデータをやり取りできるか検査する装置を製造する。5G端末の実用化には、同社の機器によるチェックが欠かせない。会社側は「需要の先食いの側面もある」と先行きに慎重な姿勢を崩さないというが、米中摩擦を懸念していったん下げた株価が戻りを試す値動きだ。
さらに興味深いのは5Gに向けた投資を積極化させたメーカーが上値を試す展開だ。ソニー(6758)は、スマホのカメラなどに使い「電子の目」とも言われるイメージセンサーの新工場を長崎県内に建設すると発表。1000億円規模を投じて2021年度にも稼働させる。村田製作所(6981)は積層セラミックコンデンサーや、特定の周波数を選別するフィルターなど、通信機器の部品増産に向こう数年間で100億円超の設備投資を実施する。
ソニーも村田製も足元で年初来の高値を更新。その後も高値圏で推移している。これらに共通するのは既に高いシェアを得ている製品が、5Gによって市場が拡大する公算が大きいという点だ。強みを持つ製品の市場が伸びるとあれば、増産によってさらなるシェア拡大や収益の拡大も想像しやすい。特に電子部品など日本企業が世界市場をリードするような分野では、そうした傾向がより強まっているとみられる。5G関連なら、なんでも買いというわけではないようだ。
日経平均株価は2万4000円をめざすとの声も出る中で、個別の銘柄にもなん年ぶりの高値といった銘柄が増えつつある。だが、上値を追う動きの中にも堅実さが見てとれるのだとすれば、「5G相場」はまだ続くとみてよいのかもしれない。
(まいどなニュース特約・山本 学)