容疑者は「偽装破門」されたヒットマンの可能性も…神戸山口組幹部射殺事件
27日午後5時すぎ、兵庫県尼崎市内の路上で指定暴力団神戸山口組の古川恵一幹部(59)が撃たれて搬送先の病院で死亡した事件を受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は28日、当サイトの取材に対し、襲撃から約1時間後に京都市内で、自動小銃や拳銃を所持していたとして銃刀法違反容疑などで現行犯逮捕された朝比奈久徳容疑者(52)が六代目山口組傘下の二代目竹中組を昨年末に「偽装破門」された後、ヒットマンとして古川幹部を狙っていた可能性を示唆した。
古川幹部は昨年3月に尼崎市内で殴打され、今年7月にも今回の現場付近で傘で殴られていたが、殺害された今回は現場から約10個の薬きょうが見つかった。小川氏は「その数からすると自動小銃を使ったと思われる。普通の拳銃よりも殺傷能力のある武器を使ったということは、『確実に相手を殺害する』という強い意識を持って動いていたと考えられる」と、自動小銃を使用した者の心理を分析した。
小川氏は関係者らを通して、二代目竹中組の組長の名で、朝比奈容疑者に対して「平成三十年十二月五日付を以て『破門』致しました」と記された破門状を確認。同氏は「去年の12月付ですが、破門状が回ったのがそれほど古くないことから、破門の日付けを昨年にした、偽装破門の可能性が強い」と推測し、組織から形式上は抜けたことで「ヒットマンとしての役目を果たそうという狙いがあったのではないか」と読み解いた。
山口組と神戸山口組の対立を巡っては、今年4月に神戸市の路上で神戸山口組系組幹部が刺されて重傷を負い、8月には神戸市の山口組系の事務所前で組員が何者かに銃撃された。そして、10月には神戸山口組系組員2人が射殺された。
小川氏は「報復ということで言えば、山口組は10月の時点でやっている。それでも、まだ終らない。『徹底的に潰す』という意識の表れを感じる」とし、六代目山口組ナンバー2の高山清司若頭(72)が10月に出所したことの影響も指摘。小川氏は「予想されてはいたことだが、高山若頭の出所後、動きが活発化している」と解説した。
現場は阪神電鉄尼崎駅の西約500メートルの飲食店やマンションが立ち並ぶ一角。一般の人の往来する街中だった。小川氏は「一般の方が巻き添えになることが懸念されます。気を付けることは、銃声が聞こえたからといって、音のした方向に、やじうま根性で行ってはいけないということ。音がやんだと思っても、その後で報復行動があることがある。直ぐに家屋内に逃げること」と注意を促した。
さらに、同氏は「暴力団の抗争に対して警察は『ヒト・モノ・カネ』に狙いを絞り、組織の弱体化をはかっている。今回は、通常見られない『自動小銃』が押収されていることから、『モノ』の出所に関して徹底的に捜査を進めるでしょう」と今後の展開を見据えた。