熊谷6人殺害・死刑を破棄し無期懲役に…遺族は「頭が真っ白」 小川泰平氏「心神耗弱」の矛盾点指摘
埼玉県熊谷市で2015年9月に6人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われたペルー人、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)の控訴審判決で、東京高裁(大熊一之裁判長)が死刑とした一審さいたま地裁裁判員裁判判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は10日、当サイトの取材に対し、加藤美和子さん=当時(41)=と小学生の娘2人を殺害された夫の加藤さん(46)の思いを代弁。減刑の理由となった「心神耗弱の状態」について矛盾点があると反論した。
小川氏は4年前の犯行直後から遺族の加藤さんに寄り添い、初公判から判決まで埼玉地裁で傍聴するなど密着取材を続けてきた。今月5日に無期懲役とする判決後も2回に渡って計6時間、話を聞くことができた。夫として父として、かけがえのない家族の命を失った加藤さんの胸中を代弁した。
加藤さんは小川氏に対して「無期懲役という判決を聞いた時は頭が真っ白になり、その後の裁判長の言葉は何も入ってこなかった。無期という判決になるとは夢にも思わなかった、全く予想も付かない判決に相当なショックを受けている」「一審で死刑判決が出たことで一区切りをつけ、仕事にも復帰したところだった。予想だにしなかった判決で、こういうことが実際にあるのだろうかと。まったく納得していない」などと思いを語ったという。
裁判員裁判の死刑判決が破棄され、二審で無期懲役に減刑されたのは6件目。小川氏は「今回、無期に減刑された理由は『心神耗弱を認めた』ということだが、一審では完全責任能力を認めており、控訴審では新たな事実が出できたわけではない。裁判官の胸先三寸、その考えだけで簡単に判決が覆されてしまうのかという思いがある」と加藤さんの思いも交えて代弁。さらに「高裁では被告に不利になることが触れられていないと感じた」とも指摘した。
小川氏は「被告は当初の取り調べで事件に関して、黙秘や否認をしていたが、刑事との雑談には普通に応じていたと聞いている。犯行後、ご遺体を隠したり、血痕を拭き取ったり、車を盗んで逃走するなど、責任能力がない者ができる行動だろうかという疑問がある」と、矛盾する要素を挙げた。
今後の展開について、小川氏は「死刑にもっていく可能性はあると思います。一審で責任能力があるとされ、その後、新たな精神鑑定の結果が出たわけではない。6人殺害して死刑にならないというのは、過去の判例に照らし合わせてもありえない」と見解を示した。