へその緒がついたまま保護された子猫 生き抜くも「心の不調」に…里親候補者宅で十分な世話を受けられず

へその緒がついたまま保護された子猫。命拾いはしたものの、十分面倒を見てくれない人のもとにトライアルに行った。十分ごはんを与えられなかったため体調を崩し、心も傷ついてしまった。預かりボランティアをしている尚子さんの子になり、少しずつ回復を図っている。

■突然、のり面から転がり落ちてきた子猫

2018年5月22日、群馬県に住む尚子さんの知り合いの人の兄弟が工事現場で働いていると、のり面の斜面から子猫が転がり落ちてきた。周囲を探したが、兄弟や親猫の姿は見当たらなかった。

しかし、子猫は産まれたてで、まだへその緒がついている状態。乳飲み子だったので、保護猫のボランティア活動をしている尚子さんに相談があった。尚子さんは、子猫を預かり、2時間おきにミルクを与え、排泄の介助をした。通常、80~90gはないと育てるのは難しいと言われているが、体重が76gしかなく神経が張り詰めた。尚子さんは、いままでにへその緒や胎盤がついたままの子猫を育てたことがあるが、2、3週間経つ頃、やっと目が開いてきたと思うと亡くなることが多かった。

■こんなはずじゃなかった

幸い子猫は、哺乳瓶から上手にミルクを飲んだ。前に育てた子より育てやすかった。しかし、生後1か月くらいの時に激しく嘔吐、下痢もして、体温が低くなり、命が危ぶまれた。しかし、それもなんとか乗り越え、2018年3月、里親さんを募集することになった。

生後3カ月の時に尚子さんの知り合いのところにトライアルに行ったが、その家の先住猫との折り合いが悪かった。

「先住猫が受け入れたくないようだと聞きましたが、そもそも受け入れる体制が整っていませんでした。電話やメッセンジャーで聞いていたのと違っていたんです。もともとごはんは1日4回、ウェットとドライフードを混ぜてあげていたのですが、1日2回、ドライフードしかあげてくれなかったんです」

子猫は、1日2回しかごはんをもらえなかったので、飢えて体調を崩していた。子猫なので、一度に食べられる量が少ないのだ。

先方が言うには、そうした給餌方法でも大丈夫だったという。子猫が、その人にべったり甘えるので、先住猫が甘えられない。いままでそそうなんかしたことがなかったのに、布団の上でそそうをした、子猫を返したいと言ってきた。

■ストレスから心の不調に

尚子さんは、子猫を引き取った。

子猫は、ストレスのため他の子の食べ物を取ろうしたり、人や猫を咬んだりするようになった。他の猫と仲良くグルーミングしていても、なぜか噛んでしまう。

再び里親を募集したが、環境が変わったせいか分離不安のようになり、ウールサックをするようになった。靴下やフリース素材のものも噛む。猫同士のコミュニケーションもうまく取れず、先住猫のビスコくんと不仲に。そういう子の里親さんを探すのも困難なので、ご主人が「もううちの子でいい」と言った。名前は、シガールくんにした。

いまだに急いで食べて他の子のごはんを取りに行くし、人間が食べているものも欲しがる。尚子さんは外で働いていて、留守番があるからか、シガールくんの分離不安が激しくなった。十分かまってあげたいが、猫を5匹飼っているので、シガールくんにしたら愛情が不足しているように感じているのかもしれない。尚子さんは、少しでもシガールくんが心地よく過ごせるように温かく見守っている。

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