ドラコン飛距離418ヤードの超人経営者 仕事も競技も「超フルスイング」

 「モノづくりのまち」東大阪にパワフルな経営者がいる。株式会社ディスタンスの酉川博文代表(51)は、ゴルフのドライバーの飛距離を競うドラコン競技の第一人者で、2016年にはWLDC世界ドラコン選手権マスターズディビジョンで日本人初のベスト8にも進出。自身が持つ最長飛距離はなんと418ヤードだ。

 「モットーは超フルスイング。欧米人は45歳ぐらいから衰え始めますが、アジア人はそうでもないんですよ」

 なるほど、見た目からして体格が良くて熱い男だ。51歳になった今年も国内大会で何度もタイトルを獲得。いまだ第一線で活躍している。

 全盛期は背筋力300キロ、右手の握力は90キロあったといい、そこから生み出されるヘッドスピードは驚異の70m/秒。目指す方向性が違うため、単純に比較できないがプロゴルファーの石川遼や松山英樹でも52m/秒前後というからその凄さが分かる。

 今ではさすがに数値は落ちているが、そこは技術でカバー。飛びの秘訣を尋ねると「リズムと捻転力。あとはギアと体がかみ合っている事。でも、例えて言うなら私はF1カーに乗っているドライバー。普通の人はマネはできませんね」と話す。

 実際、6年前には体を捻じり過ぎたのか広背筋の動脈を2本切り、血を吐いて手術…という信じられないエピソードを持つ。確かにマネできない。

 出身は山口県下関市。下関工では硬式野球部に所属し活躍したが、右肩を故障したため、社会人野球を断念し、大阪の溶接機メーカーに就職。地域の軟式野球クラブチームで4番を打ち、近畿大会優勝の実績も持つ。

 独立心が強く27歳で産業機械販売会社「有限会社スタッドラインファスナー」を設立。30歳の時、取引先との親睦を深めるためゴルフを始め、34歳でドラコン競技と出合った。

 「(クラブ)14本でラウンドするゴルフもいいけれど、ドラコンはドライバー1本で勝負できる。会社も立ち上げたばかりで、どこまで行けるか、話題づくりのためにドラコンを始め、試行錯誤し自分に合うシャフトを作ろうという事になった」

 酉川さんの凄いところはここ。自分に合うシャフトが国内にないことから37歳のとき、自分でシャフトメーカーを立ち上げて設計、開発した。自らの理論に合うシャフトを作り上げると、41歳で初のドラコン日本チャンピオンのタイトルを獲得する。

 今年12月に社名を株式会社ディスタンスに変更した。高弾性4軸カーボンシートを使用した「クアレーザー」シリーズは全国のゴルフ工房において『飛んで曲がりづらいシャフト』として多くのゴルファーに愛用されている。またイベント事業として、JLDチャレンジプロアマ大会の企画運営や、日本プロ野球OBゴルフ選手権の運営などにも携わっている。

 一方ではトーナメントプロの小西貴紀プロをサポートし「心構えができれば勝負ができる」とゴルフに対する理念を伝授。それがトーナメント後半戦の躍進につながり、先日行われた2019ジャパンゴルフツアーファイナルQTでは、日本人トップの4位となり、来季のトーナメント出場権を獲得している。

 ちなみにゴルフの腕前もハンデ6。「1ヤードでも遠くに飛ばす楽しさ」をポリシーにプレーしているとか。現在、JLDチャレンジプロアマ大会のコンセプトでもある「ゴルフ産業を盛り上げよう 社会とゴルフを繋ごう ゴルフを楽しもう」を実現するために日々活動を行っている。

 「そのためには本業の年商を上げないといけませんね。ゴルフ場も買いたい。ゴルフで社会的貢献事業をし、多くの人々に喜んでもらいたいですね」。日本一の飛ばし屋は、ゲキアツの熱血漢だった。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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