「桜」は「桜」でも「目黒川の冬桜」を満喫 廃食油から生まれた画期的イルミネーション
晩秋から初冬にかけて、世間では「桜」というワードが連日、ニュースとして報じられたが、その最中、東京・目黒川にも季節外れの「桜」がお目見えした。この企画は「目黒川みんなのイルミネーション2019」。山手線の五反田駅と大崎駅の間を流れる川沿いの歩道で、両岸合計の総延長約2.2キロに渡って約41万個の桜色LEDの電飾が木々に装着され、夜間にきらめいている。今年で10回目。東京・山の手で「冬の風物詩」となった道を歩き、そこで働く人の声も聞いた。
11月8日から来年1月5日まで「冬の桜(R)」が見られる。特筆すべきは、地域の住民や飲食店から集めた廃食油をリサイクルし、電力に活用する「100%エネルギーの地産地消」のイルミネーションであること。サラダオイル、ごま油、オリーブオイル等、あらゆる食用油を台所や厨房から集めて専門業者が精製し、バイオエネルギーとして100%自家発電で点灯させているのだ。
会場に設置された発電機を見せてもらった。大人の背丈に近いがっしりした機械で、その右下にはオイルの注入口がある。現場スタッフは当サイトの取材に「点灯する夕方5時前に一斗缶(18リットル)3~4本分を入れます。夜10時までの点灯時間中、消費量は約4割くらいなので、翌日もそのまま稼働できます」と説明した。広報事務局は「地域の皆さんも楽しみにしてくださり、それまで使った食用油を捨てずに貯めて、開催前にご提供くださる方もおられます」と感謝した。
五反田駅から約5分ほど歩き、同コースに入ってすぐの所に五反田ふれあい水辺広場がある。そこに、昨年から「みんなの屋台村」が誕生した。正午(月曜のみ午後4時)から午後8時まで、3~6台のキッチンカーが日替わりで登場。お茶漬け、コーヒー、ピザ、ラーメン、焼き芋、クレープ、からあげ、タイ風カレー、ケバブ、もつ煮込み、十勝牛とろ丼…。こだわりの料理や飲み物の店が並ぶ。
企画・協力する「ケータリングの功倫會」のスタッフは「個人事業主で頑張ってらっしゃるお店の方たちに呼びかけて作りました。キッチンカーのいいところは、温かいものを提供できること。今後も出店場所に困っている新しい人もできるようにというのが願いです」という。このスタッフは「功倫堂」として6年間、粉にこだわったタコ焼きを提供している。現場の様子を解説いただいた。
「クリスマスが近づくにつれて人が多くなります。近くのマンションの主婦の方がお子さんや家族で買いに来られたり、仕事帰りの会社員、落ち着いた大人のデートスポットとしてカップルやご年配のご夫婦、散歩コースとしてワンちゃんを連れた人、女性のグループ…。時には芸能人の方も通られます。バスのイルミネーションツアーの目的地にもなっている。この環境が何年も続いて私たちも地域に貢献できることが一番の目標です」
今月16日から25日まで、ドイツ生まれのアウトドアドーム「ガーデンイグルー」が同広場に3基登場。直径3.6メートル、高さ2.2メートル、広さ10平方メートルの円形空間。「ビニールハウスのカマクラ」といった風情で、寒風をしのぎながらイルミネーションを楽しめる。
冬の夜、五反田から大崎まで目黒川沿いをゆっくりと歩いた。勤務中に「油を売っている」わけではなく、「油で灯った桜」を堪能した。