「安心してください、弾込めてますから」 俳優・田中俊介に聞く映画愛
「悔しいんですよ、あんなに面白いのに」。そう語るのは11月に所属事務所を退社し。現在は俳優として活躍する田中俊介。彼の名前が冠となった映画祭「田中俊介映画祭」が大阪にあるシネ・ヌーヴォで12月22日、23日と連日開催された。30歳目前、変化する俳優、田中俊介に想いを聞いた。そこには誰よりも映画、映画館好きの素顔があった。
■目標を持たせてくれたのが映画だった
「大学に入るまでは野球をするのが目標でした。大学生になり、目標がなくなってしまった。そんな時、通っていた美容院のPR動画に出演し、以前所属していた事務所にスカウトされて、初めての演技レッスンを受けました。これだなと思った瞬間です」
「今は映像の世界に触れていたいとずっと思っています。映画好きな人たちと一緒に作品を作り上げるのが幸せです」
■面白い作品に出会っていないのがもったいない
2019年も映画に心踊らされたという。自身のツイッターで「#映画鑑賞記録2019」とハッシュタグを付けて投稿。その数は500を超えた。
「イ・チャンドン監督の『オアシス』とか本当に好きですね。そして「田中俊介映画祭」はシネマスコーレ(愛知県名古屋市)の副支配人・坪井篤史さんと始めたんです。内田英治監督の『ダブルミンツ』を観た坪井さんが声かけてくれて、一緒に面白いことしようって」
■大阪での映画祭では2日間で全7作品、舞台挨拶開催
「劇場未公開作品や興行的にふるわなかったけど、良い作品がある。でも、キッカケがないと観てもらえない。それが悔しいんです。映画や僕を待ってくれているお客さんがいる。今は僕のことを知って来てくれる人が多い。今は力をつけていて、大きくなって映画館にも恩返しをしたい。全国の人に作品や映画館のことを知ってもらいたい」
田中俊介の頭には常に映画とお客さんの顔がある、そんな印象だった。
■現場にはお客さんがいることを常に意識した
舞台挨拶ではクリスマスシーズンということで自らプレゼントを購入、じゃんけん大会も企画した。司会の坪井さんも「昔の田中俊介じゃ考えられない。驚きました」と語る。
「来てくれたお客さんに何をしてくれたら喜ぶか、それが全てでした」
来年の3月からは渡辺謙主演の『ピサロ』にも出演、さらには「田中俊介映画祭」も2020年verとして帰ってくることを約束してくれた。
「安心してください。田中俊介、弾はたくさん込めてますから」
ここまで映画や映画館のことを真剣に考えてくれる俳優はそうそう現れることはないだろう。田中俊介がいる限り、映画界はまだまだ面白いことが起こりそうだ。
(神戸元町映画館広報・宮本 裕也)