「授業についていけない…」その原因は「目」にあるかも? 間違い探し絵本やボール遊びで楽しくトレーニングを
私は学習障害のあるお子さんのための個別学習塾を運営しているのですが、保護者の方からのご相談で最も多いのは「小学校の学年が進むにつれ、授業についていけなくなってきた」というお悩みです。実はそういったお子さんの中には、「目がうまく使えていない」という方が多くおられるのです。
今回は目のコントロール力(目をうまく使う力)が学習に与える影響と、幼児期から取り組める目のコントロール力を高める遊びをご紹介します。
◆目のコントロール力と学習の関係
目のコントロール力があるということは、「目標物をしっかりと捉えることができる」ということと、「広い視界の中から、目標物を見つけ出すことができる」ということにつながります。こういった力は、学習面において、以下のような効果につながります。
・目標物をしっかり捉えることができる→板書の文字を目で追うことができる。ノートに書き写す時に、各場所(枠など)をしっかりと目で確認することができる。
・広い視界の中から、目標物を見つけ出すことができる→ノートに書き写した後、再び板書を見たとき、さきほど見ていた場所に焦点を合わせることができる。
もし、目のコントロールが難しいと、この「見つけ出す活動」がスムーズに行えないため、先生の板書スピードについていきづらくなる原因になってしまうこともあります。特に、授業スピードが早くなる高学年になると、それが顕著になってきます。
◆目のコントロール力の弱さは、手先の不器用さとも関係する
目のコントロール力の弱さは、学習のみならず手先の不器用さとも関連性があります。
例えば、「ハサミが上手く使えない」という事例で考えてみましょう。ハサミで切っていく活動の際、「切っている場所をしっかりと見る(注視する)」ことが大事になりますが、目が上手く使えていないと、切っている場所から目が逸れてしまいやすくなります。
紙に引かれた線に沿って切っていく場合、「線をしっかり目で追う」ことが必要になりますが、切っている場所や線をしっかり見ることができないと、「ハサミで切る」動作はなかなか上手くなりづらいでしょう。そうなると苦手意識から、子どもはこういった活動をつい避けるようになり、それが「ハサミを使う機会が少なくなる→ハサミが上達しない」ということにつながってしまいます。
手先の不器用さは、学習時において、字を綺麗に書くことができない、字のサイズが整わないといった原因にもなってしまいます。
◆目のコントロール力を高めるのに効果的な遊び
それでは、遊びの中で、目のコントロール力を上げるために効果的な遊びを2つご紹介します。これらの遊びは、子ども自身も「楽しみながら学べる」ため、飽きることなく実践練習ができます。
1. 間違い探しや見つけ出す絵本
上下や左右の絵を見比べて、間違いを見つけ出す、という活動は目を良く使う活動です。お子さんの年齢に合わせて、簡単な間違い探しの絵本からはじめてみましょう。
また、見つけ出すという本もオススメです。小さなお子さんなら、ミッケがオススメです。年長さんや小学生では、ウォーリーを探せなどがよいでしょう。
2.キャッチボールやボール蹴り
動いているボールを受け取ったり、蹴ったりするためには、目でしっかりとボールを追うことが必要です。キャッチボールやボール蹴りは、体のトレーニングであると同時に、目をコントロールする力を養うことにおいても、効果的な遊びといえます。
まずは、大人と対面してまっすぐにボールを投げたり、蹴ったり、受け取ったりという練習から行います。それが上達してくれば、今度はお子さんから少し離れた位置(お子さんが移動しないとキャッチできない辺り)に投げてあげる(蹴ってあげる)ようにしてみましょう。ボールの速さなどはお子さんの年齢や能力に合わせて、調整してください。
◆まとめ
・目をうまくコントロールすることは、小学校以降の学習に好影響を与えます。
・目のコントロール力の弱さは、手先の不器用さの原因にもなり、整った字を書くなど学習面においても影響を及ぼします。
・間違い探しの絵本や、キャッチボール、サッカーなどの遊びを通して学ばせていくといった方法は「楽しみながら目のコントロール力を高める」ことができるのでオススメです。
◆西村 猛 脱公務員。株式会社ILLUMINATE代表取締役。子育て支援の事業所を複数経営。幼児期の発達が専門の理学療法士。子どもと姿勢研究所代表。「日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士」として全国各地の保育園で幼児の運動発達に関する講義を実践中。キャッチコピーは「特技ものまね、趣味立ち話」。うんちくんグッズ集めに余念がない。