正月休業したオフィス街のコンビニ周辺を歩く…流通アナリスト・渡辺広明氏は店舗の「棲み分け化」予測
2020年は、コンビニ大手が正月の「休業実験」に踏み出した元年となった。背景には日本社会全体に広がる「働き方改革」があり、コンビニ業界の人手不足に加え、19年に広がった時短営業もその伏線としてあった。流通アナリストの渡辺広明氏は当サイトの取材に対し、「お客のいないところでは店を開けない方がいい」と、コンビニ勤務の実体験を踏まえた原点を指摘。記者は休業店舗とその周囲を歩いた。
元日の「休業実験」に取り組んだのは、セブンイレブンが2万1000以上ある国内店舗のうち、首都圏にある50店舗で、いずれも本部が運営する直営店。ローソンは全国の約1万5000店のうち、25都道府県の102の加盟店が参加。なお、両チェーン以外のファミリーマート等では特に休業実験は行われなかった。
大みそかの午後2時から1月3日の夜10時まで「3日と8時間」に渡って休業したローソンの麹町5丁目店を元日の午後6時頃に訪ねた。JR四ツ谷駅の麹町口を出て、日章旗が等間隔に掲げられた麹町大通りを上智大学のキャンパスを右手に見ながら麹町方面に歩いて5分。ローソンの看板は点灯しており、通り過ぎる分に違和感はない。
だが、店に入ろうとすれば、「誠に勝手ながら下記の期間休業させていただきます」という入口の貼り紙が目に入る。「休業期間」として「2019年12月31日(火)14時~2020年1月3日(金)22時」と表示されている。店内をのぞくと、アイスクリームや飲料品など要冷蔵のコーナー以外は消灯されて無人。改めて閉店なのだと実感した。
周囲はオフィス街。閑散としていた。東京の都心で見る元日の風景だ。車は走っているが、人通りは少ない。確かに、この場所であれば閉店していても大きな影響はないのではないかと思わせる立地環境だった。
同店から四ツ谷駅まで歩数をカウントしながら戻る途中、96歩目の場所にあった、同じ通り沿いのセブンイレブンは営業していた。くしくも、この街はセブンイレブン本社のある、おひざ元でもある。数人の来店客が確認できたが、ひっきりなしに来客がある様子はなく、休業か、営業かの選択肢としては、どちらでもありではないかと感じた。
渡辺氏は「人手不足の深刻具合にもよるが、正月にお客のいないオフィス街は今後も休業の対象となるでしょう」としつつ、「外食産業も人手不足の影響で元日を中心とする正月閉店がレギュレーションになりつつある。外食産業の閉店により、中食(持ち帰り食品)の販売を中心とする、住宅立地などにあるコンビニは今後、正月には基本的に売り上げが上がっていくと推測される」と店舗の“棲(す)み分け化”を予測した。
一方で、同氏は「フランチャイズの場合、お客の来店が多数見込まれるのにも関わらず、人手不足のために運営が難しくなる店舗に対しては、本部が全力で支援して店舗を営業すべきです」とも提言した。
最後に、渡辺氏は「一方で、日本に昭和の時代にあったような『メリハリのある正月』の風景を取り戻すのも大事かなとも思う。その場合は、国が正月の小売・飲食業の営業を規制する法整備をするしかない。生活は不便になるが、小売業には年末に人が集まり、売上が前倒しし、効率的な営業になるのかもしれない。人手不足が深刻化する今、そんな時代もすぐそこに来ているのかもしれない」と付け加えた。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)