猟犬が置き去りにされる山で偶然保護…人を頼ることを知らなかったシニア犬、同居犬たちと穏やかな日々
自然豊かな場所ゆえ、満丸さんは何度か「猟犬」を見かけたことがあるそうです。中には置き去りにされたと思われる犬も…。
「その年最後の猟が終わると、年齢が行った犬をそのまま置いて帰る人がいるそうです」(満丸さん)
ひどい話です。猟犬はパートナーのはず。人間のために働いてくれた犬を、山に置き去りにするなんて。猟犬だけではありません。飼っている犬を山に捨てに来る不届き者もいるようです。
「もう20年くらい前ですけど、山の中を車で走っていたら、犬が追いかけてきたんです。止まると運転席側に回ってきて、中をのぞき込んでいました。たぶん、同じような車に乗ってきたんでしょう。シェパードくらいの大きさに見えました。車に犬を5匹乗せていたので連れて帰ってあげられなかったんですけど、一度帰ってから迎えに行けばよかったと、思い出すといまだに涙が出ます」(満丸さん)
そう話す満丸さんの家には今、元猟犬と思われる犬がいます。名前はさちちゃん。推定10歳くらいでしょうか。
さちちゃんを最初に山の中で発見したのは、満丸さんの友人でした。首輪もせずうろついていたそうですが、呼ぶと近づいてきたことから、人間に飼われていたのは明確だったと言います。ほぼ同時に猟犬らしき犬を2頭保護して警察に届けましたが、期限を過ぎても飼い主は現れず。1頭はそのまま発見者の家族になり、もう1頭は満丸さんが引き取ることになりました。
「さちはすでにシニアでしたからね。筋肉も落ちてきていたと思います。猟をする人はどんどん若い子を使うと言いますから、たぶん捨てられたんでしょう」(満丸さん)
満丸家に来た当初は感情を表に出すことがなく、遊ぶこともなかったというさちちゃん。そこには、猟犬として育てられた犬ならではの理由があるようです。
「去年12月に、うちの近くで1歳くらいの現役の猟犬を捕まえちゃったんです。探していた飼い主さんにお返しできたんですけど、見ていると、なでてもあげないんですよね。名前のプレートを付けていたので、捕まえたとき『〇〇ちゃん、寒かったね』って触ってあげたら、ものすごく尻尾を振って喜んだんです。でも、お父さんに会って飛びついたらジロッと見られて、シュンて…。飼い主さんは悪い方ではなかったけど、家庭犬とは育て方、接し方が違うんでしょうね。だから、さちも最初は『自分の身は自分で守ります』って感じで、頼ってくることがありませんでした。少しマシになりましたけどね」(満丸さん)
満丸さんの家には他にも犬がいて、気候がいい時期にはそろって日向ぼっこを楽しみます。そこには、猟犬時代とは違う穏やかな時間が流れていました。
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