ショップでどんどん値下げされていく猫 「最終値下げ」のその先は…締め付けられる思いで決断「家族に」
大阪市の高橋さんは、ペットショップが苦手。狭いゲージの中に入れられ、その命に値段を付けられた光景を見ていられないからだ。しかし、引越し先の近所には小さなスーパーしかなく、一緒に暮らす保護猫のフードが売っていなかった。やむなく入店したペットショップで、高橋さんは少し大きくなったアメリカンショートヘアーと目があった。「値下げ!79800円」というシールの影で座っている子猫。生後2~3ヶ月の子猫たちの並びの中で、その子は随分大きく見えた。1ヶ月後、その子のガラスケースには「さらに値下げ!59800円」のシールが。その後もシールは上から重ねて貼られ続け、3カ月後には「最終値下げ!39800円」と書かれた真っ赤なシールが貼られていた。小さなガラスケースにベタベタと貼られたシールのせいで、その子の姿はほとんど見えない。高橋さんは「最終値下げのその先はどうなるの?」と、後ろ髪を引かれる思いで店を出た。
■思い出すと胸が締め付けられて…
帰宅してからもその光景が頭から離れず、家族に迎え入れるかどうか悩んだ高橋さん。「マンション暮らしで、金太郎と桜という保護猫2匹と暮らしていましたから、これ以上は…と相当悩みました。でも、あの光景を思い出すと胸が締め付けられて…」。
その日の営業終了直前の時間帯に、高橋さんはペットショップを再訪。暑い夏の夜に、レオくんは高橋家の家族になった。
広い場所が落ち着かないのか、レオくんは数日間、ベッドの下からまったく出てこなかった。少し慣れて、高橋さんの前でトイレができるようになってからも、頭を撫でようと手を差し出すと、怯えるように身体がビクッと震えた。ペットショップで人嫌いになったのかもしれないと思い、無理に触らず、そっと見守る日々を過ごした。
■レオの心を癒したのは先住猫
そんなレオくんの心を癒したのは、先住猫の金太郎くんと桜ちゃん。実は金太郎くんも去勢手術以来の人嫌いで、ベッドの下を住処にしていた。性格も年齢も近い2匹はすぐに仲良くなり、「2匹なら怖くない!」とばかりにベッド下から出てくるように。やんちゃな先輩猫の桜ちゃんは、2匹の前でおもちゃの遊び方を披露して見せた。そして、その年の冬を迎える頃には、桜ちゃん、金太郎くん、レオくんが、兄弟のように寄り添ってベッドの上で眠るように。「怖がりになってしまった金太郎がわたしと同じベッドで寝られるようになったのは間違いなくレオのおかげ。そして、レオが新しい家に早く慣れられたのは金太郎と桜のおかげなんです」。
その後、結婚を機に、ご主人の地元である愛媛県西条市に引っ越し、2階建ての新築住宅で暮らし始めた高橋さん。3匹はいまも元気で、毎日階段で追いかけっこをしているという。
「狭いガラスケースに閉じ込められていたレオの姿を覚えているので、広い家で走り回っている姿を見ると、あのとき決断して良かったなって思います」
3匹は完全室内飼いだが、レオくんは大きな掃き出し窓から外の田園風景を眺めるのが大好きだ。
「外に興味があるようですが、迷子になってもいけないので出してはあげられません。でも、うちの窓ガラスには価格シールが貼られていませんから、外の風景もよく見えるはずですよ」