「令和のキャッツアイ」原作ファンから批判も…異名を付ける捜査上の必要とは

 ホストの自宅を狙った窃盗事件で「令和のキャッツアイ」と称された20代の女性2人が警視庁新宿署に今月逮捕されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は29日、当サイトの取材に対し、被害者の男性が容疑者の女性に合鍵を渡していた背景として、現在のホスト業界における実情を解説。また、SNSでは漫画の原作ファンからその命名センスにブーイングも起きているが、小川氏は捜査員が犯罪者に「ニックネーム」を付ける実情や理由を明かした。

 逮捕されたのは、職業不詳西川菜々容疑者(25)と新宿区の無職長野芹菜容疑者(22)で、昨年11月10日夜、新宿区にある20代ホストクラブ従業員のマンション宅に侵入して、現金約104万円と高級ブランドのネックレスなど約140万円相当、合計約240万円相当の金品を盗んだ疑い。周辺では同月からホスト宅で窃盗事件が5件発生し、被害額は計3000万円相当に上っており、新宿署では2人が面識のある歌舞伎町のホストを狙ったとみて調べている。同署の捜査員は両容疑者を「令和のキャッツアイ」と呼んで行方を追っていた。

 西川容疑者はツイッターでホストの男性と知り合って接触し、常連客になることをほのめかして合鍵を入手、犯行に及んだと供述。SNSで知り合った相手に自室の合鍵を渡すことは一般常識では違和感があるが、この業界では決して珍しいことではないという。

 小川氏は「最近のホストクラブ従業員は以前とは違って、無料通信アプリのLINE、ツイッターなどを駆使して個々にお客さんを集客しています。自分の部屋には、同じ店のホスト仲間だけでなく、終電をなくしたお客さんを『寝てていいよ』と泊め、自分は他のお客さんと食事に行ったりすることもあり、その際に合鍵を渡すこともあるようです。もちろん、ホスト全員の方がやっているわけではないが、中には、そういう人もいるということです」と説明。つまり、自室でも業務の延長として使用していたことが事件の背景にある。

 さらに、小川氏は「以前は、ホストのマンション等で盗難があっても警察はあまり関与しなかった。部屋に来た仲間のホストが金のない時などに(その部屋の住人ホストが)お客さんからプレゼントされた高級バッグを勝手に持ち出して質屋に入れたりということも少なくなかった。そういう場合は侵入形跡もないし、ホスト仲間が持っていたのだろうということが多かった。今のホストは弁護士を入れて売掛金の回収など、法的に動いている方が多いです」とホスト気質(かたぎ)の変遷を指摘した。

 今回の報道で話題になったのが「令和のキャッツアイ」というネーミング。元ネタは言うまでもなく、北条司氏が1981~84年に週刊少年ジャンプで連載した漫画「キャッツ?アイ」だ。テレビアニメや映画化もされ、現在も世界各国で人気がある。

 SNSでは「キャッツアイに失礼過ぎる。あの3姉妹は、お父さんの美術コレクションを取り戻しているだけで、ホストの自宅から現金を盗んだりしません!設定調べてから名付けなさいよ」「犯行内容と動機が全然キャッツ・アイじゃない!」「3人組でもなければ姉妹でもない。キャッツアイ要素どこ?」「.もっといい名前なかったの?」などと、性別以外は実際の事件と共通点がないことを突っ込む投稿が殺到した。

 今回は「若い女性、ものを盗む」という2点から「キャッツアイ」と発想し、新元号を冠に付けた。小川氏は「私が所属していた捜査三課での捜査本部事件の窃盗犯にはニックネームが付いてした。例えばスリだと『ケツパーの◯◯』『たかまちの◯◯』。私にいろんな手口を教えた忍び込み犯は『先生』。空き巣犯だと『宵空きの◯◯』金庫破りだと『金庫の●●』ベンツで窃盗を繰り返していた男には『ベンツの◯◯』とか『50(5まる)』などになります」と明かした。

 では、なぜ捜査員は犯人に異名をつけるのだろうか。小川氏は「無線や携帯などで『●●、行ったぞ』と犯人の動きを連絡する時に、●●の部分に異名を使います。周囲に聞かれてもバレないこともあるし、あだ名をつけることで士気が上がるのです」と解説した。

 「令和のキャッアイ」も、実際の設定はまったく違うが、とりあえず、分かりやすい異名を付ける必要があった。そのため、「若い女性の泥棒」という、アバウトではあるが、その1点において命名したということになる。

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